965long

□いつだって囚われの身
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あの夜見た桜もすでに散って新緑の色を見せている。

だいぶ蒸し暑くなって、降り注ぐ日差しも強くなって来た頃だった。


降旗は靴を履くと外に出るために扉を開けようとする。
その背後から手が伸びて降旗の肩を掴んだ。

「何処行くんだ?」
「うぎゃあ!!?」

奇妙な声をあげて飛び退くと、そこには不思議そうな顔をした赤司がいた。

「ああああ赤司!?」
「ボクの名前はそんなに『あ』は多くないよ」
「ご、ごめん…」
「謝ることでもないよ。
それで何処に行こうとしていたんだい?」

降旗は基本屋敷の中にいることが多い。
それはリコの手伝いをしているからであって暇な時は文献を読んだり、里の中にいたりした。

「ちょっと散歩行こうと思って。中に居てばっかだと身体鈍るし」

ふーんと言った赤司はそれ以降リアクションをしない。

降旗はどうすればいいかわからなくて必死に頭を回転させて考える。

ビビりな分降旗はしっかり考えて行動する。その分逆に行動に移せないこともあるのだが。

思い付いたそれを恐る恐る降旗は声に出した。

「赤司も、来る?」

言ったっきり赤司がこの場を離れなかったことから、俺に用事があるのは確か。
でも俺は散歩に行くとしか言ってない。
だからもしかしたら赤司も行きたいのかな。
そう降旗は考えた。


赤司は僅かに目を見開くと、ちょっとだけ表情を緩めて頷いた。



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