965long

□悲しい程の優しさで最期まで俺を突き放す
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いつの間にか俺は高尾と初めて出会ったあの公園に来ていた。

「たか…「真ちゃん、メール見てみて」

言葉を遮られて俺は振り返らずに携帯を開くとメールが保護されたものが沢山ある。
暗証番号を打ち込んでロックを外し、今まで開くことのなかったメールを開いた。

それは“高尾和成”とのメールだった。


何度も高尾にメールを送った。
何度も高尾に電話をかけた。
でも高尾に繋がることは一度もなかった。


当たり前だ。もう高尾はいかったのだから。


奥の奥に閉まってあった沢山の想い。


ラッキーアイテムを持つことを止めた。
テーピングで爪を保護することを止めた。


そして俺は、バスケを止めた。

高尾との思い出全部に蓋をして鍵をかけた。


「真ちゃん、」


記憶が、甦る。









最後のウィンターカップの準決勝、俺達は秀徳は敗退した。
人事を尽くしてないものなどいなかった。ただ、一歩足りなかったのだ。

高尾は最後には笑っていた。
俺らの試合、終わっちゃったな。なんて言って。
一番悔しいのは主将として秀徳を引っ張ってきたお前だろうに。

次の世代への引き継ぎも終わり、俺と高尾だけがロッカールームに残った。
まだ残ったもう一試合を見るために。

用意の終わっていなかった高尾を置き去りにし、俺はお汁粉を買いに行く。
それも無事に終わり、いい加減用意の終わっているだろう高尾のいるロッカールームを開けた。

「高尾?…高尾!?」

そこには顔を真っ青にして倒れている高尾がいた。

救急車で搬送された高尾はその日の夜には目を覚ました。
俺が目を離した隙に起きたらしい。

「だーいじょーぶだって!ただの疲労だしすぐに学校に戻れるぜ」


それは夢物語にしかならなかった。


1ヶ月たっても高尾は病院を退院できず、卒業式も間近に迫ったある日のことだ。




――高尾の容態が急変した。



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