965long
□いつまでも夢を追うだけの自分ではいられなかった
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授業が終わりぞろぞろと学生は講堂から出て行く。俺もそれに乗るように外に出た。
外は相変わらず晴れていて、高尾が来た日くらいからずっと晴れているような気がするが。
「緑間!」
見れば太陽の光でハニーブロンドの髪がキラキラと輝いていた。宮地先輩は高校時代のバスケ部の先輩だ。
「…どうも」
「緑間、この頃機嫌いいな」
昔から物騒な言葉を吐きながら心配してくれた宮地先輩は今でも気にかけてくれるらしい。
まるで高尾みたいだ。そういえばあの脳天気な声が頭に染み付いて離れない。…いや、違うな本当に呼ばれている。呼ばれている?
「しんちゃーん!!」
「高尾!?」
「っ!!?」
宮地先輩は高尾を見た途端息を詰まらせ、目を見開いた。
俺が首を傾げていると高尾は俺の元まで走って来て緑の布に包まれたものを差し出す。
「はい真ちゃんお弁当!忘れてるよ!」
「…あぁ、すまないな」
「…オイ緑間どういうことだよ」
先輩が俯いたまま低い声で唸る。
顔を上げた先輩は瞳を潤ませ、その先には高尾がいた。
「お前忘れちまったのかよ!!」
「何のことですか?全くわからな…」
「しーっ、それ以上言っちゃ駄目だよ真ちゃん」
口元に指をあてて笑った高尾に俺も口を噤み、先輩も口を閉じた。
高尾は俺に弁当箱を持たせると踵を返して走り出す。
「じゃあねー真ちゃん!今日の夕飯カレーだからぁ!!」
前を向いて走れ、前を!
何処か危なっかしい高尾を見送ると、宮地先輩は蹲り頭をかき乱して叫んだ。
「あ〜っ!!わけわかんねぇ!!緑間ぁ!兎に角いい加減踏ん切りつけろよ!」
急に立ち上がり舌打ちしてから俺を一瞥すると宮地先輩は去っていった。
…意味がわからないのだよ。
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