965long
□彼の声のお話
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部活はバラバラだったけど、その日は偶然二人ともお休みで水戸部がお家に誘ってくれたからそのまま水戸部の家に行ったんだ。
「お邪魔しまーす」
「あ、凛兄おかえりー」
「おかえりー」
「ねぇねぇその人だれ?おともだち?」
ドアを開けた途端から足元に子供達が群がる。
うわ、凄い弟妹いるな。
にしても水戸部に似てるー!可愛い!
「水戸部んち凄いな!俺、ねーちゃんしかいないからなぁ」
しゃがんで水戸部の弟妹の頭を撫でるとまだ幼稚園に入ったばかりの子だろうか、その子がクリクリした目で俺を見上げる。
「おにいちゃんおなまえは?」
「ん?俺は小金井慎二って言うんだ!」
「しんじ、にいちゃん?」
「そうだぞ慎二兄ちゃんだぞ〜!」
コテンと首を傾げた動きが可愛らしくて、可愛がってたらすっかり懐かれた。
今は縁側でのんびりと庭を眺めている。
俺の周りには戯れる水戸部の弟達がいて、水戸部はと言うとお茶を入れてくるよと奥に引っ込んだ。
にしても此処居心地いいなぁ。日向で気持ちいいし明るいし。
「お兄ちゃんがあまり喋らないの変に思わないの?」
「……え?」
突然かけられた声に振り返ればこの中で一番大きいだろう小学生の女の子が立っていた。
その証拠に赤いランドセルを畳の上に下ろしている。
「だから変に思わないの?凛兄があまり喋らないこと」
「んー?別に思わないかな。だって水戸部、あ凛之助の言ってることわかるもん!」
ニカっと笑えば妹ちゃんはホッとしたように綻んだ笑顔になった。
「そっ、か…。コガ兄なら大丈夫だね」
「え、何が?」
「あ、ううん何でもないよ」
その顔はやっぱり水戸部に似ていて兄妹だなあって改めて感じる。
妹ちゃんの後ろからお菓子と人数分の飲み物を持って来た水戸部はどうしたの?と首を傾げる。
その動作が一番末の子に似ていて少し笑えた。
*
すっかり日もくれてわざわざ水戸部と妹ちゃんは見送りに来てくれた。
と言っても家すぐそこなんだけどね。
「じゃあねコガ兄」
「うんまたね!」
妹ちゃんの隣で手を控えめに振っていた水戸部が何処か寂しそうに見えたんだ。
【彼の声のお話】
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