965long
□拝啓、そちらは天国ですか?
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いつかまた現れるだろうと残り1日を待っていたが黒子があの後現れることはなかった。
時間は経過するもので一夏の思い出となり、火神の記憶の箱に入れられる。
ふとした時に思い出すあの水色。
それが恋しくて恋しくて仕方がないのだ。
あの冷たい唇を温めてやりたかった。
そう過去形でいいくるめるしかない。
季節は巡り今日火神は誠凛高校の一年生になった。
先程バスケ部の先輩ひっつかまえて入部届を出してきたばかりである。
もう今日は此処に居たってやることはない。無駄に活気ある部活勧誘に絡まれるだけだ。
「バスケ、やりてーな」
空に向かってポツリと呟いてみて、思ったら即実行だと正門を目指した。
桃色の花びらが飛んで来てそれを目で追うと喧騒の中片隅にポツンと咲いていた桜の木が目に入る。
…綺麗だな。アイツにも見せてやりたかった。
「バスケ、好きなんですか?」
ふと聞こえた透き通るような声。
何処から聞こえたんだと辺りを見回すとその下に忘れ去られたように水色の髪をした少年が立っていた。
その姿形に激しい動機と涙腺が緩むのを何処か冷静な頭で感じる。
「はじめまして黒子テツヤと申します」
満開の桃色と共に笑って見せた少年は今度は透けていなかった。
【拝啓、そちらは天国ですか】
この空の上にいるらしい神様に告ぐ!
お前らなんかにコイツはやらねーよ!!
end