短編集

□寒い冬
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「あ〜…さみぃ〜……」


俺、土方十四郎は冬の寒い夜―っつても6時だが―市中巡回をしていた


ちょっと疲れたのもあって、今は公園のベンチに座っている


あ〜なんか、あったかいコーヒーでも買えば良かったなぁ


なんて思っていたら


「お、土方くんじゃね?」


よく聞いたことある、それでいて嫌な奴の声が聞こえる


その方向を見ると、やはり予想通りの奴がいた


「…万事屋じゃねーか」


ソイツは坂田銀時こと万事屋


いつもの服にマフラーを巻いている


見るからに寒そうだな


万事屋は俺の前まで来る


「天下の鬼の副長が、こんなところでサボりですか?」


超嫌味っぽく言われる


「サボりじゃねェ。休憩だ」


と言うと


「サボりも休憩も同じようなもんだろうが。働け税金泥棒」


売り言葉に買い言葉


俺達は、顔を会わせる度にこうやって口喧嘩をしている


まぁ、ストレス解消になるからいいのだが


「税金泥棒だと…?税金納めてない奴にそんなこと言われる筋合いねェよ、働けニートが」


「ニートじゃありません〜ちゃんと働いてます〜ただ依頼がこないだけです〜」


「そういうのを働いてないっていうんだろうが。今も現に働いてねェじゃねーか」


「残念ながら今日は依頼がありました〜今はその帰りです〜」


ドヤ顔をする万事屋


「…お前もちゃんと働くときがあんだな」


素直に感心していると


「いや…なんかガチになられると傷つく!!傷つくから止めて!!!!」


ザマーミロと心の中で思う




すると、何を思ったか万事屋が俺の隣に座ってきた


「は…?帰らなくていいのか??」


横を向いて聞く


「俺も久々に働いて疲れたから休憩〜」


言いながら万事屋は背もたれに思いっきり体重をかけ、両手を背もたれの上に乗せる


そのせいで、俺の背中に万事屋の手が当たる


「チッ…」


思わず舌打ちをする


そして、煙草に火をつける




心地よい沈黙が辺りを包む




俺が息を吐く度天に昇っていく煙


万事屋が呼吸をする度暗闇に輝く白い息


なんか…変な感じだな


こうやって万事屋と肩を並べて座ってるなんてな


本当は殺したいくらい嫌な奴のハズなのに…


変だな


そこに突き刺さるような冷たい風が通る


さっむ!!


思わず身震いすると


「…土方くん、寒い?」


こちらを向いて尋ねてくる


ここで素直に寒いと言うのは、なんか負けた気がするので


「ハッ、別に寒くなんかねェよ」


ついつい強がる


すると万事屋は互いの太ももが当たるくらいに近づき、俺の肩に手を回す


「ちょ…何やってんだ万事屋!!」


抵抗しようとすると


「人肌で温め合うのが一番いいだろ?お前は寒くなくても俺が寒いから」


いや、だからってこれは…


恋人同士かッ!!


なんて心の中ではツッコむが、何故か嫌じゃない


寧ろ、ちょっと嬉しかったりするので


「フン、しょうがねェな。しばらくこのままで居させてやる。感謝しろ」


そっぽを向くと


「…可愛いな」


万事屋が俺の耳元で囁く


「な、何言ってんだ」


万事屋は、俺の手にある煙草を奪い取り下に落とす


そして――


俺の顎を手で持ち









口づけを交わした
















それから二人が付き合い始めたのはいうまでもない




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