とりあえず隣座ってろ。

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夜は嫌いだった。小さい頃から暗いところが怖くて一人じゃなにもできなかった。よく仲が良くない友達が夜は墓から幽霊が飛び出して俺らを襲ってくると聞いていたのでトイレにも行けなかった。そんなとき一緒に着いていってくれる一人の友達が優しくて強くて大好きだった。君が警察官になりたいというのなら俺も頑張って警察官になるよ。だって、俺は一人じゃなにもできないから。でも今は一人でできるようになったよ。夜のお仕事もできるようになったよ。だって、幽霊は墓から飛び出してくるんでしょ? 俺ちゃんとできてるか、見てるよね?







カイトが目が覚め最初に見たのは白い天井だった。体に違和感を感じながらも上半身を起こせば周りはベッドとテーブルと椅子しかないシンプルな部屋だった。よく見ると体中包帯がところどころ巻かれており痛みも感じられる。下はゆるい半ズボンを履かされていた。手に打たれていた点滴を持ち部屋を出た。


「……もう夜なのか…。」


寒さを感じ窓から外を見ると真っ暗だった。廊下は電気がついているが誰一人歩いていなかった。時間は判らないがどうやらほとんどの船員は寝ているようだった。ぺたぺたという足音とカラカラと点滴によるタイヤの音だけが響き渡る。


「(出口…どこだ…。)」

「誰が出歩いていいと言った。」

「!」


目の前の階段の前に立っていたのはローだった。その顔は不機嫌なのが丸わかりだった。


「お前の怪我は全治3か月だ。」

「…治してくれたのは感謝している。家に帰らせてくれ。」

「駄目だ。」

「……金か?」

「いや、お前の治療費はこの間の借りを返したまでだ。金はいらねえ。」


思い通りに行かないことに苛立ち始めるカイト。


「なら良いだろう、早く家に帰らせてくれ。俺はここに世話になる気はねえ。」

「医者が駄目と言ったら駄目だ。大体外は大雪だ、明日にでもいいだろう。」

「医者…?」


眉間に皺を寄せるカイトに近づくロー。警戒心ばりばりのカイトの点滴を持つ。


「行くぞ。どうせ外には出れねえんだ、話は部屋でしてやるよ。こんなとこで話してたら悪化するだけだ。」


歩き出すローに慌てて着いていく。体温が奪われ体中は冷え切ってしまっている。ついていくと着いたのは最初にいた部屋だった。入ると強制的にベッドに寝かされる。近くの椅子に座るロー。


「俺は外科医なんだ。」

「嘘だろ…。」

「事実だ。お前を手術したのは俺の手だ。」


いまだに信じられないカイトだったが嘘をついている目には感じられなくなり真実を受け止める。ますますトラファルガー・ローのことが判らなくなり頭を悩ませる。


「何故家に帰らせてくれねえんだ。」

「言っただろう、お前は俺の仲間にする。」

「ならねえって言っただろ! 何度言ったらわかるんだ。」

「俺は海賊だ。欲しいもんは力づくで手に入れる。」


にやりと笑うローに睨むことしかできないカイト。顔を見たくないため体を横向きに変え背を向ける。


「…勝手にしろ。俺は明日になったら島へ戻る。」

「お前の大事な刀は俺が持っているが? いらねえのか?」

「っ!! お前、殺されてえのか…。」

「逃げ出されちゃ困るからな。それと、俺らと一緒に来た方があっちに帰れるかもしれねえぞ。」

「…どういうことだ。」

「やっぱり元の世界に帰りたかったか…。こんなちっぽけな島で帰れるとでも思ってんのか? いるのは膨大な情報だろ? 俺らは世界を旅してるんだ。好都合だろ?」


はきはきと言ってくるローの言葉に惹かれ心が動き始めるカイト。沈黙を察したローは笑みを浮かべる。


「まぁ、今日は寝ろ。顔色も悪い。」

「………。」

「今まで鎮痛剤使って動いてたみたいだが、そんな真似はもうよすんだな。死ぬぞ。」


扉が閉まると同時にごりっと噛みしめた音が鳴り響いた。
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