ホエ面かかせてやる。

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―夢の中で俺とあいつは暑い暑い砂漠のようなところに任務できていた。歩いても歩いても向こう側が見えなくて、汗は止まらないし、悪魔なんて一向に出てこないし、喉はからからだし、足と頭は重いし、帰りたくて仕方なかった。文句ばかり言っても何にも変わらないけどあいつだけは笑ってこれも修行だと思えだとか、祓魔師だから仕方ねえとか言って歩き続けた。なんでそんなに涼しそうな顔ができるんだ、馬鹿じゃねえのか。そんなことずっと思ってたけど、あいつと一緒ならどこまでも行ってやろうと思える気がしてならなかった。だが、気付いたらあいつはどんどん先に行って気付いたらあいつの名前を何回も呼んで、でもあいつは振り返ることはなかった。





「おはようございます☆」


朝を知らせる挨拶が聞こえ重い瞼を開ければ目の前には椅子に座りにっこりと笑いかけている悪魔に理解するのに数秒。重い体を起こしはだけてしまっている寝まきと言う名の甚平を少しずらし、胸に手を当てる。


「”八つ姫を食らう”…。」

「ストップ!!!」


勢いよく手袋がついた手で口を塞がれる。ぐっと体に力を加え後ろへ倒れることは防げたが海斗の顔はこれでもかというくらい歪みまくっている。魔剣を出す様子がなくなり手を離す。


「…何やってんだ。俺んちだぞ。」

「まぁまぁそんな怒らず。」

「用があるなら呼び出せ。わざわざくんな。」

「用と言いますか、ちゃんと規則正しい生活をおくれているか家政婦的な存在で来ました。」

「そうか、帰れ。」


メフィストに背を向けるように再びベッドへ倒れこむ海斗。瞼も再び落とされ完全に睡眠に入る。それを許すはずもないメフィスト。


「昨日帰ってから忙しくて寝たのは3時なんだよ、まだ寝るからとっとと帰れ。」

「もう朝の9時ですよ。たっぷり寝てるじゃないですか。」

「お前と一緒にするな!」


殺気で殺してしまいそうなくらいな勢いで睨む海斗に表情変わらずのメフィスト。いかにもこのやり取りを楽しんでいるかのような雰囲気だ。


「大体この床に散らばっている缶の山は何ですか。」

「缶は缶だ。」

「そして冷蔵庫の中身の同じ缶の量と腹の足しにもならないつまみはなんですか。」

「缶とつまみじゃねえか。わかってんなら聞くなよ。」

「そういう意味じゃありません!!」


無理やり状態を起こされこちらを向かせるメフィスト。口から出るのは食事の大事さなど幅広い話を説教じみて話す。悪魔が食事の説教て…と思っていた海斗はいつの間にかこくりこくりと眠り始めていた。それを見かねたメフィストは黙って海斗を脇腹に抱え洗面所へ連れて行く。はっと目が覚めた海斗だったが抵抗する間もなく気付いたら顔には冷たい水がかかっていた。


「ちょ、すと、ぷ、んがっ!!」

「はい、これで目が覚めましたよね。」

「なんなんだお前は!! 俺に構うな!!」


がっちりとホールドされている腕の中でぎゃんぎゃんと騒いだ後みぞおちを肘で思いっきり押す。うっと呻いたあと力が弱まりその隙に台所へ逃げ出す海斗。そこらにあったコップに水を注ぎぐっと飲み干す。からからだった喉に潤いがわたり一息ついたところでちらっと目をやると鍋が一つ。


「……え、鍋…? 俺こんなもん持ってきて…。炊飯器まで………?」

「ふふふ、私を誰と思ってるんですか…。」

「(ちっ、気絶してなかったか…。)」

手をみぞおちに添え現れたメフィストはどこか誇らしげでいらっとする海斗。まさかと思い鍋を開けるとそこには日本人なら朝食には欠かせない味噌汁が入っていた。続いて炊飯器を開けると光り輝くお米が炊かれていた。


「私を誰だと思ってるんですか。」

「お前、俺より人間らしくて気持ち悪い。」
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