不運はつきもの。

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「…血生臭いと思ったらサイファーポールの9番目か。」

「……海軍少将、イマイ・カイトがこんなところで何してやがる。」

「眠れなくて見回りも兼ねて歩いてただけだ。」

「…。」


ルッチと。


ある島に任務遂行の為訪れていたカイト。先程ルッチに言ったように、夜中に出歩いていたところ路地裏で静かな住宅街には似つかわしい音が聞こえた為、近づくとこれまた任務遂行の為に人殺しなるものを行っていたルッチを見つけた。否、もはや仕事を終えた後のようでルッチ以外に生きている人間の気配は無く、赤い血は暗闇に紛れ黒く光っていた。

「はあ、随分と派手に殺ったもんだな…。明朝までに綺麗に片付けられんのか全く…。」

「そんな事を言いにわざわざ立ち寄ったのか。」

「な訳ないだろ。ただの世間話だ。」

そう言うと懐に手を入れ煙草とライターを取り出し一服し始める。隙を見せない為か、ルッチは鋭い目線でカイトの行為をじっと見つめる。

「…何も言わないのか。お前らは殺戮行為にギャンギャン吠えるだろう。」

「今更お前らに何か言ってどうすんだ、時間の無駄だろう。というかえらく饒舌だな、前に会った時に比べて。…まぁそんな事やった後ならアドレナリン出まくりか。」

「…。」

「邪魔したな…っ!」

これ以上いると向こうの機嫌悪くし最悪の場合、殺し合いでも始まってしまうかもしれないと思い背を向ける。その瞬間右腕を捕まれ2歩目が前に出なかった。六式を使いルッチがカイトを捉えたのである。返り血を浴びたルッチのにおいと歩かせてくれない行為に皺を寄せる。

「まだ話し足りなかったか?」

「…お前何故煙草なんて吸っている。いつもは吸っていないだろう。」

「は? いつも? …お前と会うのは1年ぶりで2度目だし、会った時間も10分程度だっただろ。」

「そんな事はどうでもいい。質問に応えろ。」

「(どうでも良くないだろ!?)…たまに吸いたくなるんだよ、半年に1回くらい。何で俺が吸ってないと…っゴホゴホ!!」

「!」

ポトっと火のついた煙草を床に落とし、噎せ始めるカイト。少し吃驚したルッチが思わずパッと手を離すとカイトは左壁に手をつこうとした瞬間脚が木箱に当たりその上に座ってしまった。その時間およそ2秒。一瞬の沈黙が2人を襲った。

「…それを吸う回数にはお前のそれと関係してんのか。」

「…何で知ってるかは聞いても教えてくれそうにないか。ぶっちゃけるとそう言う事だ。吸いたくてもこの体質のせいかすぐ噎せるからあんまり吸わねえんだよ…、ゴホゴホ!」

「じゃあ何故いま吸った。」

「今日は吸いたい気分だったんだよ…だからすぐ立ち去りたかったのに止めやがって…。」

ギロッと目線を上げ睨むカイトの瞳には生理現象で出てきた涙が月夜に当てられキラキラと光っていた。その姿を見たルッチは初めてカイトに出会った時の感覚を思い出す。胸がざわめくあの感覚を。

「あー勿体ねえまだ吸えたのに…。とにかく俺はもう船に戻るからな、今度こそさよならだ…っ!」

「…フフ。」

「(何でわらってんだこいつ…怖…。)何の真似だ。脚をどけ…っつ、てめえ!」

脚の間の木箱に右足を載せられ、何故か両手も掴まれたカイト。あまりの早さに追いついていない。先ほどまで人を殺していた男に油断をしてしまった。

「俺と殺し合おうのか? 勝っても負けてもどちらにも利益は生まれねえ事ぐらいわかってんだろ?」

「殺し合いね…あんたとするならさぞかし楽しいだろうがな。」

「ちょ、っぐ、調子に乗るなよ猫如きが!!」

覇気を纏い脚に力を込めルッチを蹴り飛ばす。飛ばされた本人は優々と屋根に飛び移るが少し腹を摩りながら唇をペロリと舐めた。首元を齧られたカイトは傷から出る血を無視しながらも庇うように手を当てルッチを睨みつける。

「その眼…心底虐めたくなるな。」

「傷つかせてその言い草とは、CP9は性癖もひん曲がってるな。」

「フフ、お前以外にする訳ねえじゃねえか。」

「はあ? …とにかく、今ここで殺り合って騒ぎにもなったら海軍の名が汚れる。次はないと思えロブ・ルッチ。」

「次も会う機会作ってくるってことか。」

「…仕事以外で会う事はない。もしその時同じことしてみろ。俺がお前をぶっ飛ばす。」

「フフ、楽しみだ、イマイ少将?」

キレるのをグッと堪え、その場を去るカイト。去ったことを確認しルッチの肩には1羽の鳩が乗った。その時ハットリが見たのは、眼の奥をギラギラさせ悪い表情をしたルッチで呆れたようにハットリは小さく鳴くのであった。




1週間後。
任務を終えたカイトはいつも通り書類にペンを滑らせていた。

「イマイ少将…あの、届き物が着ているのですが…。」

「誰からだ? 上からの物以外だったら帰りに見ておくから置いといてくれ。」

「いや、それが差出人が不明で…しかもその、手紙とかではなく…。」

「………。」

ポトっとペンを落とすカイト。困った表情をする部下が持っていたのはバラの花束だった。

「こんなことされる事は身に覚えがないのだが…。」

「そういうと思ってました…ん? メッセージカードがありますよ。どうぞ。」

「ありがとう。どれどれ…『傷モノにしてやった礼に今度お前を奪いにいく…。』……ロブ・ルッチイイイイ!!!!!!!!!!!!!!」

「(あ、やっぱり男だったか…。またどこで引っ掛けて着たんだろ少将…。)」
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