ホエ面かかせてやる。
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何もかも崩れ始めたのはあの日からだった。覆すような日々が続き頭と体が追い付かずアルコールで体に鞭を打った。どんなに自分が頑張ってもつらい仕事は続くばかりだし。でも、子育てってのも悪くはない。そして悪魔が手を引き最悪の舞台でスポットライトに照らされショーが始まる。
*
いくら中級悪魔と言ってもアマイモンの眷属。集中しないと噛まれそうだと頭の中を駆け抜ける。思い切り戦っているとすさまじい音とともに燐が木を含め飛んでいき岩にめり込んでいくのが見える。
「…ちょっとは手加減しろよ…!」
心配しながらもヘビモスの攻撃は緩むことはない。今は相手に集中する。
「(あいつら…結界から出てねえんといいんだが…。)」
海斗の願いが叶うことはなかった。数十分格闘していると音が大きくなった。ふと空を見るとアマイモンと炎を出して降魔剣と共に戦う燐を見て息を飲んだ。何かがあった、そう感じた。そして2人は戦っている。そしてコブリンは暗い森の中に消えていった。結界に戻っても人一人いなかったので皆を探す。
「おー雪男! やっと見つけたぜ。」
「どこへ行ってたんです!!」
「アマイモンのペットの相手してたんだよ! 途中で消えたから戻ってきたんだ。それよりこの森から離れたほうがいい。すぐ脱出だ。」
2人に背を向けてすぐさま安全なもとへ生徒たちを歩かせる。再び燐を見て冷や汗を垂らす。
「(あんな化け物の面倒みろってのか師郎め…!)こりゃ先が楽しみだな。」
再び生徒を見ると応急処置された姿が痛々しい。教師失格だな…と落ち込む海斗。これからの燐の処分についても考えてしまい心は完全に沈んでしまっていた。安全な場所にたどり着くと皆足を止める。
「はぁ…はぁ…。」
「ひっっ、息…苦し…。」
「志摩さん!」
志摩の体は既にボロボロでろっ骨が折れ呼吸ができなくなり歩くのも精一杯の状態。他の者も歩くだけで辛そうだった。雪男がしえみを下すとすぐさま海斗へ怒りを込めて鋭い眼差しを送る。
「…海斗さん、貴方こうなるのわかっていて僕を外しましたね。兄の剣をみると言っていたじゃないか! その顛末がこれか!!」
「まぁ、あわてんなよビビリメガネ。」
「あの…、どうなってるんですか…。燐は…、説明してください。」
雪男と海斗の話とこのような展開についていけない生徒たち。不安な表情を浮かべるしえみ達は2人に尋ねる。息を飲み、口を開く雪男。
「兄は…。」
「いやあ青いな…、まるであの夜のようじゃないか…。」
「!?」
声が聞こえた場所へ目を向けると建物の頂上で白い祓魔師の服を着た男が立っていた。行き成り現れた男に驚く生徒たち。その目は青い炎で燃え上がる森に向けられていた。
「プルギニョンはそこの候補生の子供たちを拘束し、事情聴取。医療班に診せるのも忘れるな。」
「はっ。」
「それと消防隊が着いたら、消化には聖水を使わせろ。ここにはA濃度の貯聖水槽があるはずだ。急げ。」
金髪で長い髪が風になびく。指示された部下たちは準備を始める。
「誰?」
「おはよう諸君! オレはアーサー・O・エンジェル…ヴァチカン本部勤務の上一級祓魔師だ。」
「つい最近、任命されたばっかの現”聖騎士”だよ。」
「えっ!?」
「そして海斗、オレはお前の直属の上司だ。」
「フン。」
キラキラと輝く笑顔を放ち親指を立てて発言するアーサー。そんな姿に気に食わないという顔をする海斗。高い場所から見下ろしてくるところも何となく腹が立つようだ。