ホエ面かかせてやる。
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強制的にリビングの椅子に座らされ、気分は下がる一方。目の前にはほかほかのご飯と温め直され適温になった味噌汁。そして向かいの席には再びにやにや笑っている悪魔。
「…俺、朝食べない主義…。」
「ここまで用意させといてそれはないでしょう。」
「いや、勝手に用意したのはお前だろうが…。」
「大方、夜ビールでも飲んで朝は胃がたるんで入らないだけでしょう。食べないと今日一日元気がでませんよ!」
「(お母さんか!!)」
図星だったので言い返せず口を閉じる海斗。メフィストの気持ち悪さも限界に達したきたが食べないとうるさそうなので橋を持ち器をもち匂いを嗅ぐ。変なものが入ってないか気になるらしい。
「毒なんて入れてませんよ。というかそんな目で私のこと見てるんですね…。少しショックです。」
「いや、俺は正解の反応をしたと思ってるよ。」
その後普通に食べ始めた海斗。水代わりにビール缶に手を出そうとしたときはさすがに手を叩かれたのであった。食べ終わるときにメフィストは思い出したかのように声をあげた。
「今日はどのような夢を見てたのですか?」
「は?」
「いえ、ただ気になって。」
行き成り夢のことを聞かれ思い出そうとする海斗。記憶を探ってもすごく暑かったことしか思い出せない。
「藤本神父の夢でも?」
「あ……。」
「当たりですね。」
「…何でわかったんだよ。」
「そりゃあ”獅郎、獅郎”と寝言で何回も言ってたら誰でもわかりますよ。」
その言葉を聞いた瞬間顔が真っ赤になる海斗。相変わらず笑っているメフィストを睨む。食器を洗面台へ持っていき水を出しながらスポンジに洗剤を染み込ませ洗い始める。
「(これは妬けますね…。)」
「…最近は見てなかったんだ、あいつの夢…つーかあいつが夢に出てきたことが。」
「以前は頻繁に?」
「…あいつが死んだ後はずっとだったよ。」
海斗の後ろ姿はさっきの威勢がいいものじゃなくしんみりとしていた。獅郎のことは表では師匠、裏では育ての親という存在でいてくれたので獅郎の死は海斗にとって大きいものだった。
「呼んでも呼んでも振り返ってくれねえんだよ。」
今にも泣き出しそうな声に抱きしめたい衝動に襲われるメフィスト。全て洗い終わり手をタオルでふき再び椅子に座り机に息を吐きながら上半身をうつ伏せる。
「泣きたいなら泣けばいい。」
「もう泣かねえよ。泣くのはもう十分だ。」
「ほう、それはお強いことで。」
「…あいつの夢みたのは燐と戦ったからだろうなあ。」
くくくと笑い始める海斗。思い出すのは燐の言葉の数々。
「メフィスト、あいつ強くなるぜ。」
「自身あり気ですねえ。」
「俺の教え子だぞ? しかもあいつは獅郎に似てる。」
にやりと笑った海斗の顔に先ほどの悲しい顔は消えていた。そこではっとする海斗。