ホエ面かかせてやる。
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よっこらしょ、と年寄りくさく教壇の机に座り足を組む。簡単に生徒を一瞥する。ほとんどの生徒は唖然とし誰も声を発することはなかった。
「つーわけで、この度ヴァチカン本部から日本支部に移動してきました、霧隠海斗、18歳でーす。はじめましてー。…なーんちゃって、この2ヵ月半ずっと一緒に授業受けてたんだけどな〜あっはははは!」
1人つっぱしり明るく自己紹介を始めた海斗に生徒の反応は薄い。
「えーと? とりあえず”魔法円・印章術”と…? ”剣技”もかよめんどくせえ。…受け持ちますんでよろしくー。」
「え…と先生!」
「んー? 何だね勝呂君。」
「先生…は何で生徒のふりしてはったんですか? あと魔印の前の担当のネイガウス先生は?」
「あ〜両方とも大人の事情ってやつだよ。ガキは気にすんな?」
「な…なんですかそれ…!」
納得のいかない回答に額に血管が浮かぶ勝呂。不安そうな顔をして質問しようと控えめに手を挙げるしえみ。とそこへゆっくりと扉が開かれぼそぼそと謝罪しながら言い訳を述べている燐が登校してきた。そんな燐は一向に入ってこないので呼び寄せる海斗。
「え? あれ…? お前!」
「ホラいいから、とっとと席につけ。」
はっと昨日のことを思い出し気合いを入れる燐。席に着いた時には異変に気付いた一部の生徒。そんな姿を見てふっと笑い教科書を手に取る海斗。
「じゃあ全員そろったとこでボチボチ授業始めるぞー。印章学入門の土占いの章から読んでもらおうかな。じゃ遅刻した奥村。」
「(やってやる!)えー…『土占いにかかわる古代のも…もん…もんもんけんは』。」
「文献な。」
「いつも通りやないですか。」
「そやな勘違いやったわ。」
この先が思いやられる気持ちでいっぱいになった海斗の初出勤の日は終わっていくのであった。