ホエ面かかせてやる。

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海斗の一撃が当たりその場に転んでしまう。その隙を見て上へ飛びとどめを刺そうとする海斗。昔の記憶が頭で再生し気持ちが高ぶってしまっている海斗は思ったことをぶちまける。だが、その言葉に反応して素手で魔剣を受け止めた。


「獅郎は…もうろくの末にサタンの炎を武器と妄信して戦いから逃げた、正十字の歴史上最も臆病で…最低の聖騎士だ!!!」

「ちげえ! 親父は俺を守って死んだんだ! 臆病者じゃねえ!!」

「…臆病者だよ。」

「〜〜〜〜!! 俺が証明する!!」

「どうやって?」

「パ…聖騎士になる!! 俺が最強の祓魔師になれば親父が俺を生かしてたのは正しいってことだろ!」


衝撃の言葉に目を開海斗。子供じみた素直な内容に口元が上げる。そのまま霧隠流魔剣技、虚々を食らわせる。


「聖騎士だと…? 笑わせるなよガキが…!………ぶっあっはっはっはっは!! ふはははははは!! …本当だ笑えるコイツ…。」


あまりに正直で獅郎に似て聖騎士になるという発言に腹を抱える。笑いだした海斗に焦る燐。魔剣を胸元へ戻し再び燐と向き合う。


「(獅郎、アンタが育てたのは武器なんかじゃねえ。息子だよ。)…お前獅郎が好きか?」

「は!? そ、そーゆーんじゃねえ!!」

「…降魔剣はとりあえず俺が預かる。お前が持ってたんじゃいつまた地の王のおもちゃにされるか判らんからな。返して欲しければ強くなって、俺に勝って取り返せ。そして証明して見せろ、…獅郎が正しかったことを。」


静かになった部屋で海斗の声が燐の耳を伝わり脳へ刺激されたようだった。燐は海斗の赤い瞳から目が離せなかった。
ふうと息をついて肩の力を抜く。未だに少し警戒している燐へ手を伸ばす。


「ほら、ここ出るぞ。俺だってこんなとこ好きじゃねえんだ。」

「あ、あぁ…。」


燐を立たせるとやっと安心したのかどっと体中の力を抜いた。それと同時に戦闘で怪我した体の箇所が痛み始めた。若干うなり始めた燐に笑いかける海斗。


「(…嫉妬だったんだろうな。コイツに獅郎を取られたみたいな感じが…。ガキくせえな俺。)」

「(コイツとあの悪魔と戦って生きてるのって奇跡なんじゃねえか俺…。)」

「ま、精々頑張ってくれよな、期待の新人。」


ふにゃりと笑った表情に顔を赤くする燐。そんなこともお構いなしにスタスタと扉へ向かっていく海斗の後ろ姿を追いかける燐であった。
正十字学園・最上部、ヨハン・ファウスト邸。理事長らしい大きな部屋に高級家具がある中には可愛らしいおもちゃや置物などが目に着く。


「上への報告は保留にする。だが、奥村燐の監視は続行する。…つーわけで、日本支部内に俺の居場所を用意してくれ。」

「…判りました。何にせよ、日本支部、個人的にもあなたのような優秀な祓魔師がいてくださるのは大変心強い。」

「ふん。」


メフィストの表情とは裏腹に無愛想な態度をする海斗。早くこの空間から出たいらしく早々に立ちあがり扉へ歩いていく。


「話は終わりだ。」

「オヤ、もうお帰りですか?」

「…メフィスト、お前いったい何を企んでいるんだ?」

「…私は人間と物質界の平和を企む者です。そのために虚無界を捨て正十字騎士團にいるのですから☆」

「フン…お前が悪魔である以上、上はお前を信用してないって事を忘れるなよ。」


海斗の頭の中は既に燐への対応を考えていた。後ろ姿を見送った直後天井から宙づりの状態でお菓子を口に含んだアマイモンが現れる。床にはぽろぽろとくずが落ちてカーペットを汚す。


「兄上信用されていないんですね…お可哀想に。」

「アマイモン…お前には今回の件で言いたいことが山程あるぞ。」

「…破壊した分ならほとんど奥村燐のせいです。それと、さっきの男は誰ですか?」

「知らなくていい、お前降りてこい! 床を汚すんじゃない!!」
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