ホエ面かかせてやる。

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「企むなど滅相もない。確かに隠してはいましたが、すべては騎士団のためを思ってのこと…。」

「(うさんくせぇな…。)」

「サタンの子を騎士団の武器として育て飼い馴らす…! この二千年防戦一方だった、我々祓魔師に先手を打つ機会を齎すものです。」

「…だとしてもまず”上”にお伺いを立てるべきだろ?」

「…綺麗に仕上がってからと思っていましたのでね。」

「…藤本獅郎もこの件に噛んでいるのか?」

「ええまあ。炎が強まるまでは藤本に育ててもらっていました。」

「そうか。」


藤本と燐との関係に胸に何かつっかかる衝動に覆われる。


「どちらにしろ上には報告する。その前にコイツを尋問したいから、大監房を使わせてもらうぞ。」

「ククク…彼は結構笑えますよ。」

「余裕だなテメー。あとでホエ面かかせてやる。」


その後雪男にごちゃごちゃ言われたが何も変わっていない雪男に落胆しお帰り願った。明らかに焦っている雪男だったが自分より立場の上の海斗に立ち向かえない自分に歯がゆい気分になっていた。大きく分厚い扉を開け何もない大きな部屋に燐をほうりなげる。


「…途中から借りてきた猫みたいに大人しかったな。」

「…お前親父や雪男と知り合いなのか…?」

「まーな…。俺は藤本獅郎の弟子だったんだ。」

「弟子!? あのジジイ弟子とかいたのか!?」

「お前らが生まれる2年間なー。ただ毎日生きる為だけに生きてた俺を救い出してくれた男…。大昔の話だ。」


小さい時の輝きのない人生を思い出す海斗。だが、すぐに力が抜けたようにふらついた足取りで倒れこむ。それを見かねた燐はすぐ駆け寄る。


「ど、どうしたさっきやられたか?!」

「なわきゃねーだろ。」

「!?」

「ベタな手にひっかかりやがって…。これで二度目だぞー? そんなに何度も他人にプレゼントしちゃうような代物だったのか?これ。」

「!! なわきゃねーだろ!!!」


海斗に襲いかかってきた燐の体は青い炎を噴き出していた。剣を抜いてないのに炎が出たことに驚く海斗。すぐに体制を整える。


「(既に炎が剣に収まりきれてないのか…。獅郎…!!)”八つ姫を食らう”…。」







「海斗…、俺にもしもの事があったらお前、俺が今後見人をしてる子供に剣を教えてやってくれねーか。」

「…? 雪男にか?」

「違う、双子のもう片方のほうだ。”燐”って名前で…笑える奴だよ。」

「何で俺が。」

「魔剣の扱いに精通してるからだ。」

「!? 魔剣を持たせる気か? 素人の子供に魔剣を持たせるなんて正気の沙汰じゃない…! アンタだって判ってるだろ!!」

「…判っているがやるしかない状況だ。お前に頼める義理じゃないのは判っているが…頼む。お前にしか頼めない事だ。…この通りだ。」

「…!! 何てザマだよ…。あの強くて冷徹で完璧だったアンタが…! 老い先が短くなって怖くなったか!? 俺を投げ出して今度はその俺にそいつを投げて寄こすのか! …見損なったよ…二度と来るな!!」




「(獅郎…俺はアンタを信じたかった。アンタは最強の師だったと…!!) ”蛇を断つ”!」


魔剣を取り出し厳しい視線で燐を見やる。自分に剣を向けたうえに降魔剣を奪われ動揺を隠しきれず怒声を張る。そして、燐が排除されると決まり身構える海斗。余裕がなくなった燐は声をあげるが容赦なく大技をくらわす。魔剣の威力はコンクリートの壁をも粉々に砕く。


「(何だこの男…!? すげぇ、本当に人間か?! さっきの悪魔といい今までとは全然違う…! 強え!!)」



「…武器をつくりてぇんだよ。」



「(こんなもののために死んだっていうのか…!! 獅郎!!)」
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