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□近寄るな
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大魔闘演武一日目の夜。
BARSUNと表記された看板を掲げた酒場で、フェアリーテイルは大騒ぎしていた。
ルーシィとグレイが惨敗してしまったが、結果としてそれは二人に火をつけることとなり、フェアリーテイルは二人を含め「目指せフィオーレ一!!!」と宴を上げた。
いつも通りのどんちゃん騒ぎ。場所が変わっても、状況が変わっても、フェアリーテイルは変わらなかった。
ナツはポテトのバスケットを片手に一緒にこの騒ぎを楽しもうと金髪の少女を探した。
「ルーシィ!ポテト食うか?」
「んぐっ」
第一声と同時に、ルーシィの口にポテトを押し込むと、押し込まれたポテトを咀嚼しながら、ルーシィは隣に座るナツを殴り付けた。
「いでっ」
「うるさい。疑問系で聞いてるんだから返事くらい待ちなさいよ」
「返事したらつっこんでいいんだな」
「そんなわけないでしょ」
「りんごどうぞ」
「せめて切ってからにして!」
ちぇ。とりんごをテーブルに置く。ルーシィとの
会話は楽しい。次はどんなボケを出そうかと考えていると。
カサカサ
奇妙な音をたて、ジュビアがルーシィの背後に近づいてきているのが見えた。
「ル〜シィ〜…」
「いやぁぁぁぁぁ!?」
地獄から這い出てきたような暗い声がルーシィに向けられ、彼女は思わずナツに抱きつく。
強くなったルーシィの匂いに、ナツの体は一気に熱くなる。
抱きついた、とは言っても、右腕に絡みついてきているだけで、いつもナツがルーシィにしているスキンシップよりも全然密着度は低い。
なのに、何でこんなに熱いんだ。
ルーシィに触れられてる部分が、燃えてしまいそうだった。
こんな状況にさせた張本人、ジュビアが、顔の影を濃くさせルーシィに顔を近づけている。
「ルーシィ…本当の本当に、グレイ様と何もありませんでしたか!?」
「はぁ!?」
グレイ。
その名前に、上がっていた熱が冷めた。
あの変態野郎。ルーシィに何もしてないだろうな。
先刻のジュビアの妄想話を思いだした。
ルーシィがグレイに襲いかかる話。
絶対にあり得ないことだけど。
フン。と、誰に向けた訳でもないが鼻を鳴らすと、ルーシィがナツの腕から手を離した。
失った暖かみを惜しむように、ルーシィに目を向ける。
その表情を見て、ナツは驚愕した。
照れている。
ナツな目線の先には、ナ
ツの腕から抜き取った手を両頬に当て、頬を赤らめているルーシィの姿があった。
頭を鈍器で殴られたような衝撃に教われる。
嘘だ。ルーシィが。まさか。
「何で赤くなるんですか!?」「は!?あ、いや、これは…っとにかく何も無いわよ!!」ジュビアに言い放って、ルーシィは勢い良く酒場を出ていった。
ルーシィのあからさまな態度に、ナツは頭をぐらんぐらん揺らした。
嘘だ。嘘だ。夢だ。
「ルーシィ…!グレイ様ー!やっぱり何かありましたねー!」
グレイに突っ走るジュビアとは正反対に、ナツはルーシィの後を追って酒場を出た。
人工の光が集まる外で、ルーシィの匂いを辿る。
彼女は案外近くにいた。
路地の入り口で、恥ずかしさを逃がすように壁を叩いている。
そんなに照れるのかよ。グレイなんかに。
ナツは軽く舌打ちしながら、ルーシィの肩をつかみ此方に向かせた。
ナツの存在に全く気づいていなかったルーシィは、「きゃっ」と小さな悲鳴を上げた。
しかし、瞳にナツをとらえると安心したように息を吐いた。
「なによ。どうかしたの?追ってきたりして」
「ちょっとガマンしてろ」
ぎゅっ、と、ルーシィの体はナツによって抱き締めらる。
ルーシィは状況についていけず、声さえ出せない。
ナツはすんすんと、ルーシィの体の匂いをかいだ。
微かだが
、グレイの匂いがする。
さっきは驚いて気づかなかったけど、注意深くかいでみれば確かにルーシィからはグレイの匂いがした。
「…気に食わねぇ」
「へぁ!?」
「臭ぇよ。お前」
この匂いを消したい。
どうして、なんて考えもしなかった。
とにかく、ルーシィからグレイの匂いがしているのが嫌だった。
「臭い!?嘘っ」
ナツの言葉の真意を分かっていないルーシィは、必死にナツの腕から抜け出そうとするが、ナツはそれを許さなかった。
消したい。グレイの匂いを。
そのためにはどうすればよいか。
最早考えるほど思考回路が回っていなかったナツは、一番本能的な行動に出た。
べろ
「…ぁ…っ」
白い首筋を、抱き締めたまま舐める。
グレイの匂いがとれないなら自分の匂いをつけてしまおうと思ったのだ。
ルーシィから上がった甘い声にナツは背筋がゾクゾクするのを感じながら、ルーシィの首筋を、肩を、なめ続ける。
「やぁ…ぁ、なに…す……!」
「もうちょっと…」
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