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森の奥深くに広大な湖が一つ。その上に浮かぶ、一人の少女。
少女は、通常のものを肥大させたような葉にしゃがみこみ、水面に映る満月を見つめていた。
緩やかな風に水面が揺れ、輪郭がぼやける。

「ねぇ…シウン」
“なんだいセルリナ”

水面の月から響く青年の声。
少女はその声に、いくらか悲しそうに眉を寄せた。

「最近、人間がこの森をうろついてる。……何の用かなぁ…」
“あぁ、そういえば昨日湖の周りが騒がしかったな”
「もし、私たちの生活が壊されたら」
“大丈夫。そうならないよう、セルリナは僕が守るから”
「ありがとう、シウン」

少女は悲しそうな表情を一転させ、笑った。
真夜中の湖。
水面に浮かぶ大きな葉に乗った少女の影と、甘い青年の声。
少女は、月に向かっていとおしそうに呟いた。

愛してる、と。


緑草は湖に浮かぶ




「あっつー…」

ジリジリと焼きつけてくる太陽に、ルーシィは唸る。
鬱蒼とした草
木を掻き分け、ルーシィ、ナツ、ハッピー、グレイの四人はマスリセナという村の森に来ていた。

今回の仕事は深緑の森の魔女退治。
夜な夜な村の子供を拐うらしい深緑の魔女。
その魔女は十年前から森に住みついており、犠牲になった子供は三十人以上にも上るらしい。
今までにもマスリセナの人々は傭兵ギルドや魔導士ギルドに依頼していたのだが、どんなに屈強な男や魔導士が来ても魔女が追い出されることはなく、かわりに魔導士たちが血相を変えて森の中から出てくるだけだそうだ。

「魔女、かぁ…。もしそんなに強い人ならエルザにも来てもらいたかったなぁ」

同じチームではあるが今は一緒に来ていない緋色の女性を頭に浮かべ、ルーシィはごちた。

「なに言ってんだよルーシィ。魔女なんか俺一人で十分だっつーの」
「でも相手はどんな魔導士でも追い返しちゃうような人なんだよ?ナツ勝てるの?」
「てか、子供を拐って何してるのかしら」
「やっぱり食べてるんじゃないかな。やだよーオイラ食べられちゃうよナツー」
「お前猫だろー」
「まともに返されると何にも言えないです。あい」
「いいからさっさと進もうぜ」
「グレイ、服」
「ぬゎ!!」

森を探索し始
めて早五日。周囲に気を配って探しているにも関わらず、四人は魔女らしき人物どころかその痕跡すらも見つけられないでいた。
それどころか、

「げ。またかよ…」

ナツたちの眼前に広がるのは足場の途切れを指す崖と、その下一面の緑色の木々。
森に入って五日間。四人は迷っていた。
理由は魔女の呪い…なんて摩訶不思議なものではなく、ナツが方位磁石を壊してしまったからである。

「あーもう有り得ない!!また今日もこんな恐ろしい森に野宿しなきゃいけないの!?」
「騒ぐなよルーシィ。暑いから」
「絶対嘘よね。あんたが暑さなんて感じるわけないでしょ。てか、こうなったのはあんたのせいでしょ!」
「そうだっけか」
「さすがハッピー以下の頭だな」
「あんだと氷バカ」
「お前よりは頭いい自信がある」

代わり映えのない風景の中での探索に、イラついていたのだろう。今が仕事中だと言うことも忘れ、両者とも手に魔力を宿しだした。

「止めなくていいの?ルーシィ」
「嫌よ。命がいくつあっても足りないし、暑さが増すもの」
グレイとナツの
ケンカから被害が来ないほどに引いて、ルーシィは草の上に腰を落ち着けた。
ハッピーもその隣に座る。

草木の匂いが濃くなり、ルーシィはため息をついた。
風が背の高い草をなぶる。
こういう自然は好きだし、この中でゆっくり本を読みたいとも思う。
でも、目的の人物も出口も見つけられないこのシチュエーションは勘弁して欲しかった。
早く帰って自分の部屋のベッドに眠りたい。

「ルーシィお腹空いたよぅ」
「食料もつきかけてるものね。川も果物もないから補給出来ないし」
「釣りたての魚を焼いて食べたいよー。ぷりっと引き締まった身もいいけどほくほく柔らかく焼いてほのかな甘さにほっぺを落としたいよー。」
「よけいにお腹空くからやめなさいよ!」

シュル

ルーシィとハッピーの掛け合いの最中、彼女らから五メートルと離れていない場所から一本のツルが地面から突き出た。





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