memory.

□04
1ページ/7ページ


<失敗>


[東]



土曜日の夜
8時



ブルルルル

『…またお前か』

『どうだい?樫偽玲央は人質にできたかな?予定なら今頃平和島静雄をやれてるはずの時間だけど』

『……てめぇ…どっかで見てやがったな?』

『何のこと?』

『いつか殺してやる。…失敗したよ。逃げられた。くそっあんなところに警察がいなけりゃぁ…』

『へぇ。やっぱり。踏み切りあたり、警察がいただろ』

『なめてんのか』

『まさか。ただまぁ、人質にできなかったことは知ってたよ。警察が来ていたことも。それくらい予想してたさ。おっと勘違いしないでくれよ。見てたわけじゃない。これも情報さ』

『予想してた?…だったら何で言わねぇ』

『君の反応が見てみたかったから、かな。怒らないでくれよ?失敗したのは君達のせいだ』


『……いけすかねぇ野郎だ。てめぇも、あの女も』

『樫偽玲央も、かい?』

『少なくとも普通じゃねーな。どっか頭のネジが飛んでるとしか思えねぇ』

『あぁ。あの子は、“人間をやめたい人間”だからね』

『はぁ?』

『はは。こっちの話だよ。それよりまた明日、頑張ってよ。学校が始まってからだといろいろめんどくさいだろう?』

『馬鹿か。今日こんなことがあったのにおいそれと部屋を出るかよ。それともあのゴロツキだらけのアパートにさらいに行けって…』

出るよ

『……は?』

『明日は花壇の整備をしなきゃいけないらしいからね。学校に行くよ。樫偽玲央は。あの子は、そういう子だ』

『…イカれてんな』

『それについては同感だね』

『そのイカれてる子の、泣き叫ぶ顔を見てみたいだろう?』

『わかってんじゃねぇか』




池袋で、最低な笑い声一つ。








次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ