memory.
□04
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<失敗>
[東]
土曜日の夜
8時
ブルルルル
『…またお前か』
『どうだい?樫偽玲央は人質にできたかな?予定なら今頃平和島静雄をやれてるはずの時間だけど』
『……てめぇ…どっかで見てやがったな?』
『何のこと?』
『いつか殺してやる。…失敗したよ。逃げられた。くそっあんなところに警察がいなけりゃぁ…』
『へぇ。やっぱり。踏み切りあたり、警察がいただろ』
『なめてんのか』
『まさか。ただまぁ、人質にできなかったことは知ってたよ。警察が来ていたことも。それくらい予想してたさ。おっと勘違いしないでくれよ。見てたわけじゃない。これも情報さ』
『予想してた?…だったら何で言わねぇ』
『君の反応が見てみたかったから、かな。怒らないでくれよ?失敗したのは君達のせいだ』
『……いけすかねぇ野郎だ。てめぇも、あの女も』
『樫偽玲央も、かい?』
『少なくとも普通じゃねーな。どっか頭のネジが飛んでるとしか思えねぇ』
『あぁ。あの子は、“人間をやめたい人間”だからね』
『はぁ?』
『はは。こっちの話だよ。それよりまた明日、頑張ってよ。学校が始まってからだといろいろめんどくさいだろう?』
『馬鹿か。今日こんなことがあったのにおいそれと部屋を出るかよ。それともあのゴロツキだらけのアパートにさらいに行けって…』
『出るよ』
『……は?』
『明日は花壇の整備をしなきゃいけないらしいからね。学校に行くよ。樫偽玲央は。あの子は、そういう子だ』
『…イカれてんな』
『それについては同感だね』
『そのイカれてる子の、泣き叫ぶ顔を見てみたいだろう?』
『わかってんじゃねぇか』
池袋で、最低な笑い声一つ。
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