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□夢  TIGER side
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「おかえりなさい、虎徹さん。」

貰ったばかりの合鍵でマンションに入ろうとしたところ、勢いよく開いた玄関の扉の向こうに満面の笑みのバーナビーがいた。
「た、ただいま・・・」

そう、俺たちは同棲を始めたのだ。
そもそも同棲を提案したのは、バーナビーの方だった。
2人は付き合いだしたものの、まともなデートすらしていなかった。
素顔で活躍する人気ヒーローのバーナビーは、外を歩くだけで目立ってしまう。
だから2人の時間は、どちらかの家で過ごすことがほとんどだった。
おまけにお互い忙しいヒーローという立場、仕事で一緒にいる時間はあるものの、恋人としての甘い時間の確保は難しかった。

『だったらいっそのこと、一緒に住みませんか?2人の時間も確保できますし、経済面においてもとても合理的です。まさに、一石二鳥だと思いませんか?』

確かにその通りだ。
だが、ヒーロー同士が付き合うってだけで市民に対して気が引ける思いがするのに、同棲ってどうなんだよ!
まぁヒーローと言えども一会社員にすぎないし、一市民なのだから負い目を感じる必要はないのだが・・・。

そんな虎徹の葛藤を余所に、持ち前の行動力で目の前の事柄をあっという間に合理的にしてしまった。
虎徹の部屋は少々手狭だったため、職場も近く2人で住むにも十分な広さがあったバーナビーの部屋で同棲を始めることになった。
流石というか何というか・・・でも正直悪くはない。
独りが長かった虎徹にとって、家に帰ったときに出迎えてくれる相手がいるのはこの上なく幸せなことだ。
しかもその相手は、King of HEROで老若男女に絶大な人気を誇る、バーナビー・ブルックスJrなのだ。
そんなバーナビーが、自分だけにこんな笑顔を向けてくれている。
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