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□Happy Merry Christmas! TIGER side
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「わりぃ、わりぃ〜。待たせちまったな。」
バーナビーの姿を見つけて、急いで駆け寄った。
「いいえ、僕も少し前に来たところです。ほら、今ちょうど7時ですよ。」
バーナビーは、PDAの時計を見せながら優しく虎徹に笑いかける。
(・・・・・・っ・・・、この笑顔は反則だよな・・・。)
同じ社内にいるのだから、本当は一緒に来ればいいのだが、さすがに2人そろって退社するのは気が引けた。
だから仕事帰りに食事に行くときも、こうして外で待ち合わせすることがほとんどだ。
少し距離を置いて歩き、路地裏の和食の店に入った。
「お持ちしておりました、鏑木さま。こちらへどうぞ。」
店に入ると、一番奥の個室になった座敷に通された。
実は虎徹は、バーナビーのために個室を予約していたのだった。
ヒーローでありながら、素顔で活躍するバーナビーはどこへ行っても目立ってしまうのだ。
おまけに人気者のバーナビーにはファンも多いため、プライベートな時間の確保が難しい。
ーーーいや、本当は虎徹がバーナビーと2人きりになりたいだけなのだ・・・。
(独占欲の塊だな、何やってんだ俺・・・。)
「へぇ〜、和食の店だからインテリアも和風なんですね。折紙先輩が見たら喜びそうですね。あれ?これって畳なのに足を下ろして座るんですか?」
バーナビーは、和室の店内を物珍しげに眺めていた。
「あぁ、これは『掘りごたつ』って言ってな、こうして足を下ろして座るんだ。こたつっていうぐらいだから、本当はこれに布団が敷いてあるんだけどな。足下ろせるから、おまえも楽に座れるぞ。」
「ホリゴタツ?あっ、足元にヒーターが点いてる!こたつって暖かいんですね。」
元々低体温気味のバーナビーは、どうやら掘りごたつが気に入ったようだった。
そんな子供のようにはしゃぐバーナビーを、虎徹はかわいいと思いながら目を細めていた。
最近のバーナビーは、雰囲気や表情が柔らくなったように思う。
出会ったころのバーナビーからは想像もできなかっただろう・・・。
ずっと独りで復讐のために生きてきたバーナビー。
その過去を知り、バーナビーの力になりたいと思うようになった。
虎徹だってこれまでの人生、バーナビーより年を重ねている分、いろいろな苦労もしてきた。
幼いころのNEXT差別、最愛の伴侶であった友恵の死ーーー。
バーナビーの苦しみは分かりあえないかもしれないけど、それでも支えてやりたいと思うようになった。
それがいつしか、バーナビーに対してこんな気持ちを抱くようになるなんて・・・・・・。