無節操

□十
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赤僕的二十万





「20万…ですか?」
「そう。何を連想するかだってさ」

手帳程の進行表から私に視線を移した榎木課長はズズとカップを覆うように持ったコーヒーを啜った。

「20万…」

うーんと唸ってレモンティーを啜った私にふわりと笑みを浮かべ、榎木課長は私の隣に腰を下ろす。
人一人分はないけれど触れる事はない距離に榎木課長がいた。

「ピンとこないかい?」

ウチの子達はボンヤリしていたよ、と微笑む榎木課長はその時の子供達を思い出したのか愛おしいと言わんばかりに和らいでいて、つられたようににっこりと笑った私は実を言うとつられた訳ではなくそんな榎木課長が愛おしいと思ったからだったりした。

「ふふ」

そんな笑みのままコクリともう一口レモンティーを飲んで笑う。
カップを手に立ち上がり、三歩。
クルリと振り返れば、少し不思議そうな榎木課長が。

「給料です」
「ん?」

突然外国語で話されたような顔をした榎木課長に、また笑う。

「20万。給料の数字としてドンピシャピンときました」
「ああ、」

なるほど、と笑った榎木課長に私は笑ったまま続ける。

「榎木課長。私、20万にボンヤリする程可愛げないですよ」

残念です、と笑いながら言外に子供ではないと伝える。

驚いたように目を見張るか、それは悪かったね、なんて言葉が微笑みと共に返ってくるかと思いきや、榎木課長はゆったりと立ち上がって進行表をコーヒーを持った手の脇に挟み、空けた手を私の頭にポンと置いた。

「十分だよ」

笑って言われたその言葉の意味が勝手に解釈した通りなのかはわからない。
わからないけれど、威力は莫大だった。


可愛い20万


腰がぬけるかと思った。






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