花 和 虎 篤

□迎えに行くから
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がたん、がたん…―

―…まもなくー**方面行きー到着ーいたします。お乗りの方はー…―

反対側のホームから電車がゆっくりと発車した。
小さくなる電車を無意識に目で追っていると聞こえた、別れへのカウントダウンを宣告するアナウンス。

来なければいいのに。

そう思っていた瞬間が分かっていたのに、やっぱり来てしまった。

「…くるな…」

電光掲示板を見ながらポツリと言った鷹丘の横顔が寂しそうに見えたのは、私の勝手な願望だろうか。

「うん、くるね」

私も電光掲示板を見てそう答える。
電光掲示板に流れる文字は確かに私が乗らなくてはいけない電車で、これを逃すと私はもう帰れないだろう。
でもこれに乗ると、もう鷹丘に会う事は出来ないかも知れない。
帰りたくないな
帰らなくっちゃ
相反する気持ちの葛藤など時間と電車が考慮してくれる訳もなく、迷いを断ち切るかのようにその電子鉄道車両は滑らかに現れた。

ぷしゅーっ

空気が吹き出す音と共にドアが開き、ぽっかりと車両の中が見えた。
誘うような、突き放すような。
突き放すように感じたのは間違いなく私の願望。
真実はきっとどちらでもない。

私に含むものなどある訳がないのだ。

「じゃあ、ね」

ギュッと鞄を握り直して微笑む。
引きつったのは自分でも分かる。
鷹丘はそんな私を返事を返すでもなくじっと見ていた。
私が電車に足を踏み入れても、何も言わない。
振り返ってドア脇の手すりをギュッと握って、記憶にすり込むようにもう一度顔を見る。

楽しかったよ
大好きだよ
ありがとう

高い位置にあるその整った顔が決意したようにキュッと締まった。

「―…オレ!お前の事絶対」

ぷしゅーっ

鷹丘と私の間は鉄の扉に阻まれ、呆気にとられた顔をしたお互いの顔が綺麗に拭かれた窓に映る。
走り出した電車の中、私はこらえきれず呼吸困難になる程に、笑った。


聞こえない。
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(次の駅で折り返すからもう一度言って)

 

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