黙示録 -Apocalypse-

□第六章
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そして、地に着地したシンは、攻撃を仕掛けてきた人物を見るなり、その碧眼を大きく見開いた。

「──あーあ、当たらなかったかぁー」

そこにいたのは、嘗て廃墟化した神殿で対峙したあの少女だった。

「こんにちはぁー皆さん。始祖が一人、ルカちゃんでーす」

手を上げて言いのけた少女の言葉に、優達の顔色が変わる。その反応に気をよくした少女──ルカは嬉々として得物を回転させ、そして菫色の瞳が優を捉えた途端、彼女の口角がゆっくりと持ち上げられた。

「───女神様。見ーっけ」

そして次の瞬間、掻き消えたルカの姿は、一瞬にして優の眼前に現れた。

「!!」

慌てて神器を発現させたものの、衝撃によって優の体は吹き飛ばされ、倒れたテーブルにぶち当たった。船客から、悲鳴が上がる。

「優!!」
「だ…っ大丈夫…」

鈍痛を堪えつつ、メイファの声になんとかそう答える。その正面に、ニーソックスに覆われた細い足が降りてきて、優は身を硬くした。

頭上から、楽しげな声が降ってきた。

「こんなとこでいつまで油売っちゃってんの?イザヤがあんたを欲してるんだよ。ほら、行こうよ女神様」
「…誰が、行くかよっ!」

立ち上がりざまに神器を振るう。
ルカは軽々とそれをバックステップで回避し、そして陽炎を周囲に纏わしている優の姿に、ひゅうっと口笛を鳴らした。

「力は健在、っと」

何処となく嬉しげに呟いたルカの周囲を、武器を手にしたシン達が取り囲む。
じりじりと詰めてくる彼らにルカは決して動じず、ただ視線を静かに巡らした。

「やーだなぁ。何マジになっちゃってんの、きもいんですけど」
「あんたが帰ればすむ事ネ!早くどっか行くアル!」
「ぷっ…きゃははっ!ちょっと、あんたのその訛りなに!?超ウケるんですけど!」
「はあ!?今何て言ったアル!?もういっぺん言うネ!」
「大丈夫メイファ!あたし、あんたのその喋り方好きだから!」
「私もですわ!可愛らしくていいじゃありませんの!」
「…話ずれてないか、お前ら」

優とアナスタシアのフォローもシンの冷静なツッコミも、今のメイファには届いていない。
一頻り笑ったルカは──それでも未だ笑いながら──くるりと得物を回転させた。

「邪魔しないでくんない?目的は女神様だけだから、邪魔立てしなかったら殺さないではいてやるよ?」
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