黙示録 -Apocalypse-
□第六章
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「素敵なデザインですもの。ねっ、今度そのお店に案内して下さらない?みんなで一緒に買い物に行きましょう?」
メイファの髪飾りをちょいちょいと直しながらアナスタシアはそんな事を言い、優は笑った。こんな調子で、フランスを離れてから、アナスタシアはことある事に優に話し掛けてくれる。
それは他愛もない話や、趣味、特技や出身国の事など、とにかく機会があればアナスタシアは優に話し掛けてくれた。一人でいるとつい塞ぎ込んでしまいがちだった最近の優にとって、それは非常に有り難かった。
メイファも相変わらず優と一緒にいて、そんな彼女達に救われている事に優は気付いていた。
そして──
「──シン。おはようございます」
「…ああ。はよっ」
シンは相変わらずの調子で。彼が弱みを見せたのはあの一瞬だけで、それからの彼は一切の動揺を見せなかった。
だからこそ、優も動揺を晒す事をしなかった。シンの平静を崩さない態度は、優の中である種の枷と化していた。
だから───
(──強くならなきゃ)
それが、せめてもの罪滅ぼしになるといい。
「いただきますっ!」
高らかに宣言し、優は無遠慮にフォークをウインナーに突き刺すと、肉汁が迸る程ジューシーなそれを一口で食べた。
「アイヤー、優そんなにお腹空いてたアルか」
「違うよ、これからに備えてエネルギー蓄えてんのっ」
そう言って、優はパンにマーガリンを塗る。そんな優の前方で、アナスタシアは感服したように微笑んだ。
「素晴らしいですわ、優。腹が減っては戦は出来ませんものね」
「うちも優見習うアル!食べて食べて食べまくるヨ!」
メイファがフォークを振りかざしたその時だった。
不意に窓の外に巨大な陰りが落ちたかと思うと、轟音と共に船体が大きく揺れた。
「きゃあっ!!」
衝撃で、テーブルの上に並べられていた食べ物が床に落ちては、無残に潰れる。
「なんだっ!?」
シンが窓を開け放つも、ここからはちょうど船首の影になっていて何も確認出来ない。
続いて、先程よりも遥かに凄まじい衝撃が船体を揺るがし、室内にいた乗客は一斉にパニックに陥った。
「なんですの、一体!?」
「海賊アルか!?」
「…!──シン!!」
「!」
優の声に、シンは反射的に神器を発現させ、防御の姿勢を取った。
一瞬遅れて、凄まじい衝撃が剣にぶつかり、シンはそれを弾き返すと後方に跳んだ。