黙示録 -Apocalypse-

□第十四章
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「うっそ、葵じゃん!なになに、超久し振り!」
「久し振りはこっちの台詞だっつの!あんたジャパンに帰ってきてるんだったら連絡の一つくらい寄こせよな、この馬鹿!」
「あはははっ!ごめんごめん!」

葵と呼ばれた少女から飛んできた軽い一撃を受け流す。全くもう、と溜め息まじりに呟き、葵は鞄を抱え直した。

「つかマジであんたいつ帰ってきたのよ」
「昨日晩ー」
「えらい帰国早くない?あんた予定だとあともう数日いるんじゃ無かったの?」
「んー…予定変更になった」
「ふうん。どうだったの、音楽院」
「…ボチボチ、だったよ」
「………」

生じた不自然な間は、恐らく葵に伝わっている。葵が口を開くよりも早く、優は話題を切り替えた。

「そんな事よりさ、学校どーよ最近。千紗や涼子元気?」
「元気元気、チョー元気。あっ、でもテスト近いからヒーヒー言ってたわ」
「はあっ!?なにそのテストって!」
「まんま。校内一斉学力検査だって」
「うっそ!あたしそんなん聞いてないし!」
「だってあんた今日帰国予定じゃなかったじゃん」

あんまりな事実に、項垂れる優。

「マジ最悪…。帰国すんじゃ無かった」
「楽勝だって。今から学校行ってノート見たら何とかなるわ」
「学年トップの葵と一緒にすんな!」
「あ、あれ涼子に千紗じゃん。おーい」

葵の声に、前方を行く学生二人が振り返る。明らかに寝不足な顔、加えて手には教科書付きで。
葵を見るなり、二人の目にみるみるうちに涙が浮かんでいく。

「葵ぃー!──…って、優!?」
「嘘!?超久し振り──ってかお前生きてたのかよ!」
「人を勝手に殺すな!」
「よっしゃあ!追試仲間発見!」
「ねぇねぇ葵お願い!今日のテストカンニングさせて!」
「却下」
「ってか有り得ない!教科書読みながら登校とかどこの優等生だよお前、有り得ねー!」
「うっせーよボケ!」

腹を抱えて笑う優に、怒鳴る千紗。その横では葵に必死に頼み込む涙目の涼子と、きっぱりと断る葵。
“いつも”に帰ってきた事が急に実感となって押し寄せ、優は、笑いながら涙が零れそうになるのを必死に堪えた。




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