黙示録 -Apocalypse-

□第十一章
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直後、頬に走る鋭い痛み。そのまま倒れる事は許されず、メイファは前髪を鷲掴みにされ、無理矢理顔を上げさせられた。
至近距離にある、菫色の瞳。

「はあーい、チャイニーズ」

楽しげな声とは対照的、ルカの目は少しも笑っていない。恐怖に萎縮する喉に、メイファは無理矢理空気を通した。

「ル、カ……」

直後、再び頬に鋭い衝撃を受け、気付いた時メイファは地面に這い蹲る形になっていた。
頭上から、いつもより幾分低い声が降ってくる。

「馴れ馴れしく呼ばないでくんない?アダムを唆したくせに」

背中に、ヒールの感触。 

「ここにいたら来るとは思ってたけど、マジで来るとはね。きゃははっ、超ウケる!」
「…っ」

頭に響く高い笑い声と、背中に食い込むヒールの痛みに拳に力がこもる。

「アダムもバッカだよねー。危険を冒してまであんたに伝えてさっ!無駄だっつの、あたしが──ここで殺すんだから!」

得物を振りかざすのが影の動きで分かったが、それがメイファの首を掻き斬るよりも早く銃声が轟く。

「……」

銃弾が、メイファの背後にそびえる瓦礫に突き刺さるとほぼ同時に、ルカの肩口から鮮血が散る。だが当のルカは激痛に顔をしかめる事もなく、ゆっくりとした動作で振り返った。
煩わしげに細められた菫色の瞳が、硝煙の立ち込めた銃口を定めているエドガーを捉える。

「…おっさん。殺すよ?」

冗談の一切含まれない雰囲気に圧せられる事もなく、エドガーは煙草を銜えたまま飄々とした表情を崩さない。

「ほー、お嬢ちゃんに出来んのか?」
「は、…言ったね、おっさん。──今更命乞いなんてしても聞かないからね!」

メイファの首から刃物を離し、ルカは一瞬にして空中に身を躍らせた。応戦しようと神器を発現させた優だったが、構えたところで思いがけずそれは制止された。

「お前はメイファを。終わったら手伝い頼むわ」

え、と思って顔を上げるよりも早く、エドガーは煙草を揉み消すと、新たなライフルを取り出した。

銃口から轟音と共に火花が何度も何度も走る。銃弾の嵐をかいくぐりつつ、ルカは大地を蹴り、一気に急接近を図っている。

「、…分かった!」

瓦礫の影を走り抜け、優は倒れ伏しているメイファを抱き起こした。

「メイファ!大丈夫?」
「う、うん────…っ優、後ろ!!」

尋常ではないその声に、咄嗟に防御の姿勢を取る。一瞬遅れて、鋭い刃が刀身にぶつかった。激しく噛み合う刃の向こうで、さらりと長い金髪が揺れる。
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