黙示録 -Apocalypse-

□第九章
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「げっ!それ、あたし絶対やだ!すぐお婆さんなっちゃうじゃん!」
「それだけじゃありませんわ。肌年齢も一気に低下ですわよ」
「だったら、シン絶対駄目。そんな魔法使うくらいなら、大人しくあたしの治療受けなさいっ」
「誰が回復魔法使うっつった、誰が!」

かなり大真面目に言ってのけた優を、シンは一蹴する。

「俺だって習得してねぇんだよ。回復魔法の習得は他の魔法に比べて桁違いに難しいんだ。だろ、アナスタシア?」
「そうらしいですわね。けれど、肉体──生命活動に関わる魔法は、それでいいと思いますわ」
「?なんで?」
「負傷した肉体を修復する──それは、生命を操作する事に繋がる。そんなの神への冒涜だ。異端の技術と変わらない」
「…」
「薔薇十字団の信条ではそうなっているそうですわね」

アナスタシアは笑った。

「でも我がロシアでは近年、その考えは変わってきていますのよ。魔法論理に秀でた者達が今、回復魔法の理論解明に励んでいますの。私としては賛同出来かねますけど、小規模──小さな傷を治すぐらいなら、肉体にかかる負担も軽いですし」
「アナスタシアは使えるの?」
「いいえ。残念ながら才が無いんですの」
「現実問題、扱える人間はいねぇんだ」
「ふうん。──まっ、よく分かったからさ。とにかく治療するよ」

手際よく、優は治療を進める。包帯を巻いていくその馴れた手付きに、シンは意外そうに目を瞬かせた。

「随分手馴れてんだな」

と、思わず声に出してしまった程だ。
得意げに優は笑う。

「ま、ね。──はい、終了。ど?大丈夫げ?」
「…ん、多分」
「本当?…よかった」

安堵した優にシンは一瞬目を奪われたが、彼はすぐに取り繕うように視線を逸らして黙りこくった。

「──じゃ、ちょっとあたしメイファんとこ行ってくるね」

よっと立ち上がり、あっという間に優は室外へと出ていった。

その気配が完全に遠ざかったのを見計らい、アナスタシアはシンの正面に腰を下ろす。そんなアナスタシアの前で、シンは今しがた優によって巻かれた包帯を気遣いながらインナーの袖を下ろしている。
そんな彼を、アナスタシアは真っ直ぐ見つめた。

「…どうですの?」
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