黙示録 -Apocalypse-

□第四章
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「優!?」

崩れた優を、慌ててメイファが支える。メイファは何の異変も感じていないのだろう、優を見つめる瞳はただ不安げに揺れているだけで、苦痛も何も見受けられない。

(なに、これ──)

額に脂汗を滲ませ、優は苦悶の顔を上げる。その優の視界に、自分と同様、頭を押さえて膝をついているシンの姿が飛び込んできた。

シン、と叫ぼうとしたが、ひどい痛みにより声にならなかった。光の波は緩やかに収まっていくと同時に頭痛も嘘のように緩和されていったが、不快感は最後まで消えなかった。

「…成る程」
「…あんた、何を……」

優の問いに答えず、クレールは笑みを浮かべた。──貼り付けたような笑みを。

「失礼した。客間を用意しておるから、今宵はどうぞそちらで休まれよ。──司祭シン」
「…はっ」
「司祭シンには新たな任務だ。南フランスより微弱ながら別の神器反応が感じられる。その地に赴き、真偽の程を確かめよ」
「…、御心のままに」

頭を押さえたままシンは立ち上がると、優達を引き連れて壮麗な造りの扉を出た。

「…二人共、大丈夫アルか?一体どうしたネ?」
「…メイファはなにもないの?頭痛いとか…」
「なんにも感じないヨ」
「メイファは感じなくて当然だ」

階段を下りながらシンは口を開く。

「あれは神器発現者にだけ効果がある術だ。…あの野郎──」

シンは周囲に誰もいない事を確認すると、声を潜めた。

「絶対に油断するなよ。あいつはお前が神器を所持している事に気付いている。何をされるか分からない」
「そんなに神器って大切なの?」
「本来なら、教団が徹底的な管理下に置くべきものだ。預言者クレールの動向には用心しろ。あいつは…信用ならない」
「本当ヨ。なんか胡散臭いネ、あのおっさん」
「口外するなよ。言われたくないだろうけど、お前らはアジアンって立場もあるんだから」
「うん…。──でもさ、シンって不思議だよね」
「?」

優の意図するところが分からず、シンは小首を傾げた。

「だって、そうでしょ?シンは異端審問官で、本来なら誰よりもあたし達を弾圧すべき立場にある人じゃん。なのに、そうしようとはしないんだもん」
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