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□第十二章
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「う……」
重たい気だるさと、手足を蝕むむず痒い感覚に、梨乃は呑み込まれた筈の光から生還した。
「……」
腫れぼったい瞼を無理矢理開き、焦点を定める。
どうやら、洞窟の中のようだった。
剥き出しの岩肌には点々と灯りがともり、自然発光物といった類のものが光を放っているようだ。
(どこ…?)
重い上半身を起こし、周囲に目を配る。洞窟内には、誰一人として欠ける事なく、仲間達全員が散らばるようにして倒れていた。
起き上がる気配の無い仲間達を尻目に、梨乃は自分の頬をつねった。
「痛い…」
『梨乃。生きてるし、夢でも無いよこれは』
「…そうみたい。…寒っ」
ぶるっと感じた肌寒さに、梨乃は散乱している木々を適当に集めて火をおこした。その時、炎の気配に気付いたのか、傍らで倒れていたルシオがゆっくりと覚醒した。
「おはよ」
「…お前、もう目が覚めてたのか」
額を押さえ、ルシオは半身を起こす。一人目覚めると、後は順にエルウッド達も覚醒していった。
「…ここは、一体…」
覚醒し切れていない表情で辺りを見回したアシュトンに、ルシオは力無く首を振った。
「知らん。細かな時空間座標の固定は出来ないんだ。どんな時代だろうが文句言うな」
その言葉に、梨乃達は弾かれたようにルシオを見た。仲間達の不安や焦りの入り混じった表情に、ルシオは怪訝そうに眉を寄せる。
「なんだ」
「なんだ、じゃねぇよ!てめぇ、まさかまた亜空転移──!」
声を荒げたエルウッドに、ルシオはそこで初めて気付いたのか、あぁ、と声を上げた。
「そんな事か」
「そんな事って…お前なぁ──!」
「これ以上不死になる事があるか?あるわけないだろう?だったら、この話はここまでだ」
エルウッドが更に喚くよりも早く、それより、とルシオは話題を切り替えた。
「未来、過去の固定すらも出来なかった。分かるのは、ここは僕達のいる世界という事だけだ」
「うーん…戦争真っ只中の時代とかじゃないといいんだけど…」