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□第十章
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「……遅い」

苛ただしげに呟いたプリシスに、仲間達の視線が集中する。椅子を蹴るように、プリシスは立ち上がった。

「私、迎えに行ってくる!」
「お…おい、プリシス!」

駆け出したプリシスを、慌ててエルウッドが制する。

「梨乃だって子供ってわけじゃないんだぜ?時期に戻ってくるって!」
「いくら何でも遅すぎよ!もう何時間経ってると思ってるの!?」

それでも梨乃を捜しに外へ向かおうとするプリシスの強硬な態度に、エルウッドは大仰に息をついた。

「…プリシスさぁ、ちょっと過保護すぎねぇ?そんなに心配する事もないと思うんだけど…」
「嫌ね、エルウッド。女相手に何ヤキモチ妬いてんのよ」
「…う、うるせぇよホリィ!」

真っ赤になって声を荒げたエルウッドの横で、アシュトンは思考を巡らすように天井を見上げた。

「だけど、確かに遅すぎるね。何かあったのかもしれない」
「…あーもう。仕方無いわねぇ、捜しに行きましょっか」
「…どこで道草食ってるんだ、あの馬鹿は」

口々に言い、ルシオ達は得物を手に取ると立ち上がった。



◇◇◇



「…なんでよりによってここに辿り着くんだよ」

呆然と、エルウッドが呟く。
ルシオ達が今いるのはスカイテッドの大神殿の中。時間が時間だからだろうか、参拝者の姿どころか神官の姿さえも見受けられない。

「だって市内全部捜したでしょ?あとはここしかないじゃない」
「いや、だって大神殿だぜ!?さすがの梨乃でもここにはいねーよ!」
「可能性はゼロじゃないでしょ。ほら、捜す捜す」
「民間人立ち入り禁止区域には入るなよ」
「…絶対いないって、こんなところ」

大仰に溜め息をついてエルウッドが踵を返した瞬間、彼の足元の床が突如として爆発した。

「のわっ!!」

吹き飛ばされ、エルウッドは尻餅をつく。

「…っホリィ!てめぇ、俺に恨みでもあんのかよ!」
「はぁっ?私じゃないわよ」

心外だと言わんばかりにホリィは眉を顰める。

「でも今のどう見たって霊術…──!」
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