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□第十一章
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「…どうしてあんた達は、誰一人として欠ける事なく戻ってくる事が出来ないのよ」
「……」
頭上から降ってくるホリィのあまりの低い声に、梨乃達は並んで正座をしたまま、項垂れて刺々しい言葉を全身で受け止める事しか出来なかった。
「…か、返す言葉もございません」
視線を明後日の方向に向けたまま、梨乃はごにょごにょと口を開く。
「で、でもよ!梨乃は見付けたんだぜ、俺達!なぁルシオ!」
「戻ったら、今度はプリシスがいなくなっていたけどな」
ここぞと言わんばかりに叫んだエルウッドにも、ルシオは冷たい。うっ、と言葉に詰まったエルウッドの前で、ホリィは頭を抱えて溜め息をついた。
「…もー、どうしてこうなっちゃうのかしら」
「迷子になるような子じゃないんだけどね」
苦笑するアシュトン。その時、あまりに唐突に部屋の扉が開いて、梨乃達は振り返った。
「プリシス!」
そこに立っていたのは、紛う事なきその人物だった。答えるように片手を上げ、プリシスは弱々しく微笑んだ。
「どこ行ってたんだよ!いきなりいなくなったから俺すっげぇ心配したんだぞ!」
駆け寄ったエルウッドに、プリシスは申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「…あはっ、ごめんごめん。人の波に流されちゃって、気付いたら大分遠くにいたの。ごめんね、エルウッド、ルシオ」
「もーなんだよ、俺マジ心配した!」
大袈裟なまでに安堵の息をついたエルウッドに、プリシスは再度、ごめんね、と呟いた。
やがて、すっかり日も暮れ始めた事により、男性陣は割り当てられた部屋へと戻っていった。部屋の窓から見える空の色も、徐々に夜の訪れを色濃く反映させている。
ホリィは薬草の採取に、梨乃は風呂に行き、室内にはプリシスただ一人だけが残されていた。
「…………」
──全てはお前次第だ。また会える事を期待している。
ベッドに座ったまま、プリシスはその言葉を消すように強く首を振った。
(信じちゃ駄目…)
だがその反面、プリシスの胸中には「もしかしたら」という考えも同時に生まれる。
恐る恐る、プリシスは周囲に目を配った。
室内には、ジャスティスが壁に立て掛けるように置いてあった。降霊具は何処にもない。
(一緒に、持っていったのね…)
思わず漏れた落胆の溜め息に気付き、プリシスは青ざめた。