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□第七章
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気がついた時、そこは神殿の中だった。目の前で、レイチェルは宙に浮遊したまま笑みを深めた。
「理解したか?シャープトリアン一族の罪を、リゼルグ自身の身勝手な所業を」
「身勝手!?はっ、バッカじゃないの!」
声を張った梨乃の横で、エルウッドは弓の標準をレイチェルに定める。
「身勝手なのはジーンだけじゃねぇか!一族の他の人達だって、みんなみんな被害者じゃねぇか!“シャープトリアン一族”って言葉で、括んじゃねぇよ!」
「ルシオは、ずっとあたし達の仲間!分かったらとっとと精神操作を解け!」
強さを増した梨乃達の言葉に、レイチェルの目が不快げに眇められた。
「ならばその仲間の手で葬り去られるがいい」
言い残すや否や、レイチェルの姿がゆらりと揺らめく。
「ちょっと!分が悪くなったら、逃げる気!?」
「待ちやがれ、レイチェ──…うわ!」
追い掛けようとしたエルウッドの前に、立ちはだかるようにして何体もの巨大な狼が現れた。
「気を付けて!魔物だ!!」
言いながら、アシュトンは力強く槍を振るう。
「梨乃!あんたに任せるわ!ルシオを何とかして止めて!」
「分かった!」
詠唱しながら叫んだホリィに返し、梨乃はジャスティスを構え直した。瞬間、疾風の如く踊り出たルシオに、梨乃は必死に応戦する。
(やっぱり強い…!)
彼の剣は自分に攻撃をする隙を与えなかった。そんな中でもややあって、梨乃はやっとの思いでルシオの剣を弾き、一歩下がって素早く精神を集中させた。
「──シルスファーン!!」
梨乃の声に呼応し、疾風と共にシルスファーン兄妹が現れる。
「手加減してね!!」
『りょーかい!行くぜ、ファーン』
『うん!』
幾つものかまいたちが、ルシオに牙を向く。凄まじい衝撃にルシオがたじろいだ隙を見逃さず、シルスの引き絞った弓から何本もの光の矢が放たれた。
それらはあらゆる方向からルシオの体を狙う。双竜刀で防御の姿勢を取るものの全てを防ぎきれるわけもなく、幾つもの裂傷を負ったルシオだったが、彼の傷口はすぐに淡い光と共に塞がっていっていた。
(不死の身体)
再度付き付けられた、事実。