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□第五章
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世界に再び色が戻った時、そこは見覚えのある街並みだった。

「ここは…」

近代的な景観に、街の高台でゆったりと回っている巨大な風車──スカイテッドだ。
どうやら無事現代へ戻ってくる事が出来たようで、梨乃はほっと胸を撫で下ろした。

「これからどうしよっか?」
「あんまり長居はしたくないよね。レイチェルが近くにいるんだし」

街の奥にそびえ立つ巨大な神殿を仰ぎながら、アシュトンは言った。

「そうだな。一旦街から出よう」

ルシオの意見に賛成し、皆はスカイテッドから離れようと出口に向かって辻を曲がった。

その時だった。

「うわっ!!」
「きゃあっ!!」

梨乃の声と、高い声が重なったと同時に、二つの影は尻餅をついた。

「っつ〜…」
「やだ梨乃、大丈夫?」
「お前って、しょっちゅう人とぶつかってるよなー」
「注意力の無い証拠だ」
「あーうるさいうるさい!」

強打した尻を擦りながら梨乃が喚く中、梨乃とぶつかった少女はつかつかと歩み寄ってきたかと思うと、がっと胸倉を引き寄せて乱暴に揺らした。
深いフードで顔は覆われているため表情は確認出来ないが、どうやら怒っているようだ。

「ちょっと!あんた何人にぶつかってきてんのよ、おかげでお尻打ったじゃない!賠償金払いなさい、ばいしょーきん!!」
「──はああっ!?意味わかんない!ぶつかってきたのはそっちもだろ!?自分は悪くないって言い方すんな、このクソガキ!」

梨乃の怒声に、少女はじぃっと──フードで隠れているので目は見えないが──胸倉を掴んだまま見据えた。

降りる、沈黙。

(やばい…言い過ぎた?)

冷たい汗が背中を伝うのを感じたその瞬間、

どごっ、と頭を鈍い衝撃が襲った。

「〜〜〜〜〜っ!!?」

声にならない悲鳴を上げ、悶絶する梨乃の後ろで、ルシオ達が事態を把握しきれずに唖然としている。

「…ったぁ!あんた、何すんのぉ!?」

痛む頭を抑えて声を荒げた梨乃の前方で、少女はぱさりとフードを後ろに滑り落とした。
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