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□第四章
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翌日。昼過ぎに一行はスカイテッドに辿り着いた。
スカイテッドにはレイチェルが治めるシヴァ神団の総本山がある。それ故にか住民の殆んどが彼女の神団の信者であるようだ。
だが話によると、レイチェルは今は不在らしい。街の奥にそびえ立つ神殿の巨大な扉は堅く閉ざされている。
「おい見ろよ、あれ!すげぇでかい風車があるぜ!」
エルウッドが指をさした先、街の喧騒から離れた小高い丘陵地。そこの上で、巨大な風車が風に吹かれてゆっくりと回っている。
「わぁ!凄いわね、風なんてそんなに吹いていないのに」
「な!な!行ってみようぜ!」
観光気分のエルウッドを先頭に、梨乃達は風車のある丘を駆け上がる。
近くで見ると、それは予想していたのよりずっと巨大なものであった。建築されてから何百という時間が経過しているのか、所々風化が見られる。
「すっごいなぁ。何でこんなもんが…」
プリシスと同様、感嘆の息を漏らした梨乃にルシオが口添えをする。
「スカイテッドは古くは風奉りの都として栄えてたからな。その頃の名残だろう」
「へぇー。……ん?」
風車の麓に何かが刻まれている。梨乃は屈み込み、長い年月でこびりついた泥を拭った。
そこにあったのは、何かの紋様だった。梨乃の手が触れた途端、呼応するように降霊具が輝き、地が大きな音を立てて鳴り出した。
「な、何だぁ!!?」
風車の石レンガの一部が崩れ出す。やがて、その音は唐突に止み、崩れた壁の向こうから地下へと続く階段が現れた。
「……下りろって事?」
「…のようだな」
万が一に備えて武器を手に取り、四人は階段を下りた。その先にある年月を感じさせる通路からは、突風が吹き込んできている。
やがて、梨乃達は開けた所へと出た。
広がる殺風景な空間。
そこには中央付近に巨大な石舞台が建造されていた。朽ちた様子も見受けられず、大理石の舞台は未だ輝きを帯びている。
「これって…」
『ほら、見ろよファーン!人間だぜ!』
急にどこからともなく幼い少年の声が空間に響き、梨乃達は辺りを見回した。だが、どこにも人影らしきものは見当たらない。
『だ…駄目だよ、お兄ちゃん。見付かっちゃうよ』