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□第一章
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「──おのれ!逃がすなぁ!!」




武器を携えた神官服の男達は、一斉に大地を蹴る。恐るべき大罪を犯した、目の前の女性に向かって。
ダークグリーンの長髪を翻し、女性は逃げるように踵を返す。
暫く駆け抜けた女性は、不意に勢いよく振り返ると、片手を前方に突き出した。困惑の色を浮かべている男達の前で、女性の掌に急速に光が収束していく。

淡く色付いた唇を開き、女性は言い放った。

「──消えて」

それに呼応するように額で真紅の宝玉が煌めいたかと思うと、次の瞬間、大気が一瞬で膨張し、凄まじい轟音が周囲を揺るがした。

上がる、男達の断末魔。

やがて晴れた煙の下からは、先程まで動いていた男達の屍が、粉々になった大理石の床と共に散乱している。
そして、もうそこに女性の姿はなかった。

「……よろしいのですか?」

その一部始終を祭壇の上から眺めていた、栗色の波打つ髪をもった女性がゆっくりと尋ねる。その横で、金色の髪を持つ蒼の女性は悠然と頷いた。

『よろしいのですよ』
「しかしあの女はあれを…──」

だが、女性は特に気にとめた風もなく、子供に見せるような穏やかな微笑みを浮かべた。

『安心なさい。既に実体を失いつつある彼女には扱う事は出来ません。それに私達とは志が違うのです。気に病むことなどありません』
「しかし……」
『ですが、野放しにしたままにはしておきません。早急に手を打ちましょう』
「……そうですね」

栗色の髪の女性は口元を綻ばせた。






「全ては、神の御心のままに───」




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