黙示録 -Apocalypse-
□第六章
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窓から射し込んでくる光と、いつもとは違うシーツの感触に優は深い眠りから覚醒した。
唸りながらのっそりと体を起こし、見たこともない室内に暫く思考はついてこなかったが、やっと今日までの状況を思い出して、そっか、と掠れた声で呟いた。
今、優達は旅客船の中にいる。
イザヤを追うという形でフランスを後にし、今別大陸に向かっている途中なのだ。
彼が何処にいるのか皆目見当すらつかないのが現状であるが、シンが言うには「優のいる所に絶対にイザヤは現れる」との事らしい。
彼は敢えてその理由を話さなかったが、大体察しはついていた。
「女神…」
言葉にしてみても、やはりそれは現実味を帯びない。
「………」
と、また思考が暗い方に向かっているのを悟り、優は気を引き締めるように頬を叩いた。
(…悩むな、悩むな!)
──女神だからって、何も気にする必要ない。
その考えに引っ掛かりは感じつつも、制服に着替え、何気なしに携帯を開いた。
『不在着信 八件』
ディスプレイに表示されているその文字に、息を呑む。
ボタンを押して着信履歴を見、ややあって、溜め息をついて、携帯を閉じるとカーディガンのポケットにつつきこんだ。
(あと一週間くらいなら、大丈夫だよね…)
その時、扉がノックされて、未だ眠そうなメイファと共にアナスタシアが入ってきた。
「優、朝ご飯食べに行きましょう?シンももう起きてるみたいだから」
「あ…、うん」
鍵を閉め、優達は通路を進んでいく。
「ねぇ優。優、きれいなピアスをしていますのね」
「これ?これね、フランスで買ったんだ。アンティークショップで一目惚れ」
「素敵なデザインですわ」
「優、その時衝動買いばっかしてたアル!手当たり次第のアクセサリー掴んでたの見たネ!」
「メイファ!?」
「まぁ…凄いんですのねぇ…」
アナスタシアは感嘆の溜め息を漏らす。
「でも、優うちにも買ってくれたヨ。ほら、今日から髪飾りこれにするアル!」
そう言って、メイファは得意げに頭を指差した。二つに結われたお団子の近くで、可愛らしい形の髪飾りが揺れている。
「メイファつけてくれたんだ」
「一人じゃ出来なかったから、アナスタシアがつけてくれたヨ!」