黙示録 -Apocalypse-

□第十章
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一面が、闇色だった。





上も、下も、何処を見ても闇。


漆黒──否、違う。漆黒と言う言葉では言い表せられない程の闇だ。


(ああ成る程…)


夢か、と、ぼんやりと思う。現実味の無さ過ぎる空間には、それが一番相応しい。
事実、今こうしてここに居るという感覚自体が希薄なのだ。


(変な夢…。早く目覚めないかなぁ…)


大地の感覚だとか、自分が今どういう体勢を取っているのかすら分からないこの空間は、あまり居心地の良い所では無い。


ふわあ、と暢気にあくびを一つ──その刹那の出来事だった。






──夢じゃ無いよ。






聞こえた声に、優の意識がぴんと集中する。


(……誰)


五感を、フルに活用する。
答えるように、闇色の空間に再び声が木霊した。



──これは、夢なんかじゃないよ。



(………)



用心深く、周囲に目を配る──と言っても、視界は闇色以外映さないが。


気配はしない。最初から、此処には誰も存在しないかのように。


否、でも何者かがここに存在しているのだ。
不安定に騒ぐ己の魂が、そう告げている。



(…あんた、誰)



──あなたはもう、目覚めるべきじゃないのよ。



不気味に反響する声に、何故かぞわりと背筋が粟立つ。不自然に早まる鼓動を鎮めようと意識を集中させるが、成果は表れなかった。



──目覚めるべきなのはあなたじゃない。私よ。



(…はっ?なにそれ、あんた何──)



──分からないの?こんなに近くにいるのに。



くすくす、と、空間に笑い声が木霊する。かなり耳障りなその声に、意識せずとも眉間に皺が寄る。



──…ほら、こんなに近くにいるのにね…。



瞬間、轟、と自身の内側からせり上がってくるような圧力に、耐え切れず、優は膝を付いた。



(う、ぐ…っ!)



凄まじい圧迫感と内臓を押し上げられるような不快感が同時に押し寄せる。
胃液が逆流してきて、思わず口元を抑える。どっと嫌な汗が滲んだ。



──ほら、ね。これで分かったでしょう?



(…っ)



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