黙示録 -Apocalypse-

□第一章
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───ああ、汚い。







瓦解した高層ビル群。
かつて栄華を極めた人類の、崩れ去った文明の跡。
炎がくすぶり、風に乗って粉塵が、汚れた地表には不釣り合いな程澄み渡った青空を舞う。

荒廃した世界の真ん中で、独りきりのその影は天を仰いだ。

汚れきった大地。
血を、肉を、化学物質を、叫びを、命を吸いきって。

息が詰まりそうなこの世界。
私の愛した世界。
例え私の存在を拒否しようとも、愛してやまなかった世界。





変わり果てた──世界。





人間はいない。
愚かにも世界規模で核戦争を展開し、そして自滅していった。


ああ、なんて残酷で悲しいんだろう。
一体誰がこんな結末を予想しただろうか。


魂が悲鳴を上げる。
気が付いたら、頬を涙が伝っていた。
乾いた風が雫を散らしていく。






──ああ、私は。





愛していた。
護りたかった。
助けたかった。
赦したかった。

大地を、世界を、人間を。
どれだけ蔑まれようが。
どれだけ拒まれようが。
誰よりも誰よりも。

地表は、最早生物が生き残れる環境ではない。
放射能により大気は汚染され、大地は疲弊し、おおよそ文明らしい文明は存在しない。

だけれど、信じたい。

まだ世界の何処かで人類が生きている事を、
再び繁栄を極める事を。





「──…愛しているのです…」





汚れた大地の真ん中で、涼やかな声は風に浚われていった──。




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