黙示録 -Apocalypse-

□第八章
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ちょうど一週間が経過した。


チャイナ行きの旅客船が今日港を発つ。身支度を整え、優達は世話になったリネットに挨拶に向かった。
まだ朝もやの立ち込める早朝だと言うのに、リネットは既にキッチンで料理に取り掛かろうとしていた。

「リネットさん。今までお世話になりました」

代表して頭を下げた優に、リネットは驚いたようだった。

「もう行っちゃうの?」
「ええ。朝一の便で」
「だったら港までエドガーに送らせるわ。もう少ししたら帰ってくると思うから」
「エドガー、こんな朝早くにどこ行ってるアルか?」

まだ眠そうに目を擦りながら尋ねてきたメイファに、家電を取り出しながらリネットは、

「ちょっと、ね」

と答えただけで、深くは何も言わなかった。数回のコール後にエドガーは出たらしく、旨を全て伝えるとリネットは受話器を下ろした。

「時間まだ大丈夫?よかったら、朝ご飯食べていって」

リネットは手早くオムレツを焼き、優達は簡単に朝ご飯を頂くと、玄関先で車のエンジン音が聞こえてきて、リネットは勝手口を開けた。

「お帰りなさい、エドガー」

彼女の言葉に続いて、おー、と短い返事が小さく聞こえてくる。リネットに再度挨拶をして、優達は玄関先に出た。

「おーっす。おはよーさん」
「はよー」

車の窓から顔を覗かせたまま、エドガーは既にトレードマークの白衣に身を包んでいる。

「出港は何時だ?」
「7時ちょうどだ」
「じゃあ、まだ余裕だな」

アクセルを踏み、優達を乗せた車はがらがらの車道を進んでいく。

「エドガーっていっつもこんなに朝早いの?」

開けた窓から入ってくる朝特有の瑞々しい空気を感じながら、優は尋ねる。エドガーは煙草を銜え、紫煙が風に吹かれていくのを見ながら頷いた。

「まぁな」
「私達を送って遅刻になりませんの?」

純粋な疑問をぶつけてきたアナスタシアを、エドガーは笑い飛ばした。

「おいおい、さすがにこんな朝早くから研究所も開いてねーって」

だったらこんな時間にどこ行ってんの、と思ったが、それを尋ねるのは何となく憚られて、優は何も言わずに、人で賑わい始めているワシントンの街並みを眺めた。
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