黙示録 -Apocalypse-

□第十一章
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「あら残念。殺そうと思ったのに」
「イヴ!」
「ちょっと待って下さる?えっと…」

刃を噛み合わせたままイヴはぐるりと周囲を見渡し、そして瓦礫の向こうにシンの姿を捉えると、傍目にも分かる程顔を輝かせた。

「──シン!!よかったわ、まだ生きていたのね!」

びくり、と、シンの肩が震えたのが遠目にもはっきり見えた。

優の目の前から一瞬でイヴの姿が掻き消えたかと思うと、いつの間にか、彼女はシンと鼻先が触れるぐらいの距離にいた。ぎょっとするシン。

「イ、イヴ…」

動揺を露にしているシンに、イヴは至近距離で微笑んだ。

「ふふっ。よかった、まだキレイなまま。大丈夫?女神様に何もされていない?」
「意味分かんない!キモいんだよ、あんたの発言!」

後方で喚く優などお構い無し。イヴはシンの頬に手を這わし、うっとりとその碧眼を細めた。

「どうしてこんなにも違うのかしら…。魂の情報は同じ筈なのに、あっちには全然惹かれない…」
「…何の話だ、イヴ」
「まあ。そんなに怖い顔しないで頂戴」

ふふっと笑って再度頬に手を伸ばしたが、今度はシンは顔を背けた。彼が拒絶した事に、ほんの一瞬、イヴは目を瞠らせたが、彼女はすぐにいつもの笑みを貼り付けた。

「大丈夫。シンが知る必要無いから。今ここにいる──ただ、それだけでいいじゃない」

その碧眼にシンの姿を宿したまま、イヴの周囲で一気に魔力が高まる。誘発するように空気が膨張し、凄まじい寒波が優達に襲い掛かった。

「さ、寒いアルー!!」
「あ…んのクソシスター!」

震え上がるメイファの前方で、優は神器を横に構える。轟、と優の周囲を炎が渦巻いたかと思うと、牙を向いた寒波と優を取り巻いた熱波が激しくぶつかり合い、発生した水蒸気により、全員の視界は奪われた。

「ちょっと、なになにー!?イヴ、あんた何やったのー!?」

虚空を仰いでルカは叫んだが、白い闇の向こうにゆらりと浮かんだ影に、己の得物を体の前で交差させた。一瞬遅れて、激しく刃がぶつかる。

「…やりますわね!」
「…なーんだ、団長さんかぁー」
「私では不服だと仰りたいの?」
「不服、不服。チョー不服。ちょっとおっさん、どこいんのー!?とっとと出てこないと、先にこの団長さんをナマス斬りにしてやんよ!?」
「呼んだか?」

場にそぐわぬ暢気な声が降ってきたかと思うと、白い闇の中から激しい銃弾の雨が牙を向く。どれも狙い違わずルカの足元の大地に被弾し、一瞬ルカが力を抜いた隙に、アナスタシアは後方へと跳んだ。
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