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□第二十二章
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露骨過ぎるホリィの反応に、満足げににやにやしている梨乃の前方で、プリシスは改めてといった具合いに感嘆の息をついた。

だが、ホリィがそんな簡単に肯定するわけがない。案の定、彼女は否定した。

「じょ…冗談じゃないわよ!誰があんな強くて優しくて気配りも出来て礼儀正しくて頭も良くて信頼出来て他人に甘いけど自分には厳しいような奴!す…好きなわけないじゃない!」

息もつかせぬまま言い切ったホリィの主張に、梨乃とプリシスは目を瞠らせたまま硬直した。

「…よく、見てるのね」
「ってかノロケ?ノロケにしか聞こえないんだけど」

その言葉にハッとしたホリィは、次の瞬間、声にならない絶叫を上げ、居たたまれずベッドに突っ伏した。

「……いつからよ」

枕に顔を埋めたまま訊ねてきたホリィに、プリシスは苦笑する。

「んー…私は結構前からかな。何となく、だけど」
「あたし、ずっと気付いてたよ!」

何故か、梨乃は誇らしげだ。

「だって、ホリィあたし達と全然態度違うんだもん!気付かない方がおかしいって!なにかとアシュトン見てるし、気にかけてるし!でも駄目だよホリィ、好きならもっと素直にならなきゃ!アシュトンってモテるからさぁ、もっと素直に尚且積極的にならなきゃどこぞの馬の骨とも分からぬ女に取られちゃうって!」
「う…うっさいのよ、この馬鹿ぁ!」

悲鳴とも似付かない声が轟いた瞬間、梨乃の頬を雷光掠めた。

「あ…あんたみたいなガキんちょに恋愛指導受ける程困ってないわよ!とにかく黙れ、この馬鹿!」

続いて枕をぶん投げられ、梨乃は慌てて身を屈めた。

「うわぁっ!?な、なになにホリィ!?だって本当の事じゃん!」
「うるさいっ!!」

とどめだと言わんばかりに杖が飛んでき、慌てて廊下へ飛び出した梨乃が扉を閉めた瞬間、ごおん、と鈍い衝撃が走った。思わず安堵の息をついた梨乃は、隣の部屋の扉が軋むのを感じて顔を上げた。

「お前ら、うるさい」

廊下に出てくるなり不機嫌そうに言い放ったルシオに、梨乃は引き攣った笑みを浮かべた。

「…もしかして、全部聞こえてた?」
「物を投げる音辺りからだ。大方、またお前が余計な事言ったんだろ」
「はぁ!?またって何!?って言うか余計な事なんて──!…言ったか」
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