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□第七章
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彼の口ぶりからはレイチェルを敬っているような印象は見受けられない。そんな中、身体中に傷を負った神官服の男がロキに助けを求める。
「…ロキ様…どうか…お助け…を…っ」
足下に縋りつくようにして助けを求めるその男に、ロキは冷ややかな視線を送った。
そして──
「お前、うるさいよ」
すっと、掌が男に向けられる。困惑している男の目の前でロキの掌に光が収縮し、やがてそれが弾けたかと思うと、男の顔は粉々に吹っ飛んだ。
他の男達から悲鳴が上がる。
「…おい!仲間じゃねぇのかよ!」
目の前で繰り広げられた惨劇に、エルウッドが声を張り上げた。
「仲間、ねぇ。僕はこいつら地上人の事を仲間だなんて思った事は一度もないよ」
「…地上人?お前まさか──」
ハッとしたのはルシオだけではなかった。吹き荒れた突風に、ロキの金の髪がなぶられ、その下から独特の尖った耳が姿を現した。
「…あんたも同じエルフでしょ!?どうしてここを襲ったの!」
叫んだホリィに、ロキは不快げに眉を寄せた。
「…ふざけるなよ。何が同じエルフだ。僕はお前達も含めてみんな大嫌いなんだから」
全てを凍て付かせるような瞳の冷たさに声を詰まらせた梨乃達に向かって、ロキは掌を差し出した。その掌から強い霊力の波動を感じたと思った瞬間、凄まじい暴風が吹き荒れ、梨乃達の体は為す術もなく吹き飛ばされた。
「った……」
痛みに身を捩る梨乃達に、ロキは手を突き出したまませせら笑う。
「自己紹介が遅れたね。僕はロキ。神の使徒の一人だ」
その言葉に、梨乃達は過剰な反応を示した。
「レイチェルの…差し金か…!」
「まっ、そういう事かな。僕はこれで失礼させてもらうよ。あんまり任務から外れた事やると、小うるさい奴がいるし」
ポケットから取り出した筒を地面に投げ付け、ロキは巨大な怪鳥を召喚した。
「ああ。そう言えば──」
軽い身のこなしで背に飛び乗ったロキの瞳が、ホリィを捉える。
「君の事かな。あっちで倒れてた男が仕切りに、ホリィ、って呼んでたよ」
「!」
ブラッドの事だ。ホリィの背筋が氷付く。
「無事なんでしょうね、ブラッドは!!」
ロキへ定められた杖の先端に膨大な霊力が凝縮されるが、ロキは変わらぬ笑みを浮かべたままだった。