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□第七章
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「止まれ!貴様ら、そこを動くな!!」
それは、明らかに梨乃達に向けられたものであった。
振り返った先にいたのは、真っ白な神官服に身を包んだ男達の姿であった。
梨乃達は万が一に備えて、各々の武器に手をかける。
そんな中、一人の男の目がホリィへ止まった。
「お前、エルフだな」
ホリィは何も言い返さない。男は乱暴に彼女の首を掴んで前に引き出した。
「悪いが命令だ。お前を殺して、ジェムを頂こうとするぜ」
「おい!!」
エルウッドの怒号にも、男達が聞く耳を持つ筈が無い。
男がホリィの肩を掴んで乱暴に引き寄せた瞬間、その体に体温とは違う熱が走り、男は反射的に彼女の肩に置いた手を離した。
ゆっくりと、ホリィは顔を上げる。
「……あんた達が、やったのね」
地の底に響くような低い声。
瞳に宿る深い激憤の色を見て竦み上がった男達に、ホリィは最も近くにいた男の眼前に杖を突き出した。
次の瞬間。杖の先に光が宿ったかと思うと、男の顔が膨れ上がり、凄まじい勢いで弾けとんだ。
「ひ──ひいぃ!!?」
肉片と鮮血が辺りに降り注ぐ中、男達は悲鳴を上げて脇目も振らず逃げ出した。
「…逃がさないわよ」
無情な言葉を紡いだホリィの周囲で、風が踊る。巻き起こった旋風が男達の体を切り裂くが、逃げ惑う男達の足は止まらなかった。
その時だった。
「──あれぇ?もう片付いたのかい?」
この場に似合わぬ呑気な声がどこからともなくしたかと思うと、炎の中から巨大な鎌を持った一人の青年が現れた。
ホリィの瞳の色が変わる。それは、以前スカイテッドの街中ですれちがったエルフと思しき青年だった。ロキと言う名前だが、梨乃達の知る由もない。
「ロキ様!!」
血にまみれた男の中の一人が叫ぶ。ロキはそんな彼等に一瞥だけをくれると、梨乃達に笑顔で向き直った。にやりとした、どこか冷酷さを感じさせる笑みだ。
「やぁ異端者の皆さん。ごきげんよう」
「異端者!?ちょ、それってあたしらの事!?」
「当然さ。自分の事を神だとかほざいているレイチェル様の崇高な理念に反対してるんだ。一体何考えてんの君達」