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□第七章
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「その…ごめんな」

ばつが悪そうに頬を掻いたエルウッドに、未だ話の見えないルシオは眉を寄せた。

「何がだ」
「俺、さ…何も知らずにリゼルグ…っーか、お前らの事ずっと悪く言ってたんだよ。だから──」
「歴史書ではそうなってるんだ。今更どうこう出来る問題ではない。お前が気に病んでも何も変わらない」
「……そっか。そう、だよな。ごめん、でも俺、謝りたかったんだ…。そんだけだから──」

肩を落としてとぼとぼと立ち去っていくエルウッドの背中に、ルシオは言葉を投げ掛けた。

「悪いな」

その声が届いたのか、エルウッドの顔は一気に華やぎ、凄まじい勢いで飛び付いてきた。

「お…おい!抱き付くな!」
「へへっ」
「…?あれ?」

後ろでそんな会話が繰り広げられている中、梨乃はめざとくガラス窓の向こうに何かを見付けた。

「ねぇホリィ。何あれ?」
「?」

自分達が向かっている方角を示す。森の中からもうもうと、空高くにまで立ち上っている明らか炊事のそれではない、黒煙。

そこに何があるのか理解した瞬間、ホリィの顔色が一変した。

「あそこ──私達の里だわ!!」

ホリィはガッとレバーを手前に倒し、スピードを急速に上げた。

「みんな…ブラッド…!」

嫌な予感がする。
里の外れにある格納庫に飛行艇を降ろすや否や、ホリィは直ぐ様里へと走り──愕然とした。

「何よ、これ…っ!」

一面炎に包まれた、故郷。

沢山の人々が、燃え盛る家の周囲や広場に、変わり果てた姿で倒れている。

「大丈夫ですか!?」

アシュトンが一番近くに倒れていた女性の口元に手を当て、悔しそうに唇を噛み締めた。

「駄目だ…死んでる…」

血を吐くが如くアシュトンが呟いた、まさにその時だった。遥か遠くから沢山の足音が轟いたかと思うと、脳天を貫くような大喝がつんざいた。
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