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□第七章
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「レイチェルから全て聞いたんだろう?憎いなら憎いと言え。同情するな、吐き気がする」
「ルシ──」
「うるさい!!」

びくり、と背筋が張る。
荒げた声とは裏腹、ルシオは苦悶に歪んだ顔を隠すように腕で覆った。

「頼むから、こっちを見るな…。すぐに消える…だから──!」

それ以上、彼は口を開こうとしなかった。

「…あなたがそうしたいんだったら、私は止めない」

ややあってプリシスは、静か過ぎる声で告げた。

「でもね、梨乃が目覚めるまで待ってあげて。梨乃はね、きっとルシオの一緒にいたい。だから、彼女と話してからにしてあげて。それがすんだらあとはルシオの思う通りにしていい。私も止めないから」
「…」
「でも、これだけは覚えていて」

ルシオの顔が、おもむろに上げられる。プリシスは、笑った。

「あなたはルシオだから。レイチェルを止めるまで一緒に戦う私達の仲間だから」

そう言い、プリシスはもう一つのベッドで眠り続けている梨乃に目をやり、小さく笑った。

「これ以上は何も言わないから。もう少しで梨乃も目覚める筈。私達は向かいの部屋で待ってるから。何かあったら呼んでね」

手を振って、プリシスの姿は廊下へ消えていった。

「……」

ルシオはベッドの縁に腰掛け、恐る恐る隣のベッドを覗き見た。

「……梨、乃……」

掠れたその声にも、梨乃は一切の反応を返さない。
傍らの机に丁寧に畳まれている彼女の服には、血は付着していなかったが、眠る梨乃の肩に巻かれている包帯には、生々しく新たな鮮血が滲んでいた。

恐る恐手を伸ばし、彼女の包帯に触れようとしたが、寸でのところでルシオは腕を引き戻した。

「僕が…──」

(やったのか)

その時の記憶は、全く無かった。

だが精神操作が解けた時、血にまみれた双竜刀と、同じく血に染まった梨乃の肩が生々しく飛び込んできて、それが、全てを物語っていた。

「………ごめん」

一度ついで出た言葉と共に、思いは溢れるように湧いてくる。

「ごめん…ごめんな…梨乃……」

熱くなっていく目尻と共に、言葉がどんどん溢れてくる。

その時だった。
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