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□第七章
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ホリィを先頭に皆は飛行艇に乗り込み、大急ぎで飛び立った。
◇◇◇
一行は、スカイテッドに滞在していた。
「……」
プリシスは、未だ昏々と眠り続けている二人をそっとドアの隙間から覗き、微かに溜め息と共に扉を閉めた。
「どうだった?」
向かいの部屋で待機しているエルウッドの声に、プリシスはふるふると首を横に振った。
「…駄目。まだ目覚めそうにない」
そう言って、ぼふっとベッドに腰掛けた。降りる、重苦しい沈黙。
「でも…ルシオがあのリゼルグだったなんて…」
俄には信じられない話だ。
時の禁を破り、不死の身体となって400年間生き続けてきたというのだから。
だが、それは紛れも無い事実だった。
現に自分達はルシオがリゼルグであるということを思い知らされた。
だが、それと同時に、彼は歴史書に記されているような人物では決してなかったということも──。
「私、もう一回覗いてくるね」
プリシスは再度向かいの部屋に向かい、室内に入った瞬間、その足ははたりと止まった。
「あ…──」
ルシオが、体を起こしていたのだ。
努めて、プリシスはいつもと変わらぬ笑顔を浮かべた。
「ルシオ。もう大丈夫なの?」
「……」
返事は無い。構う事無く、プリシスは続けた。
「無理しない方がいいよ。まだ横になって──」
「どうして、」
「え?」
視線は遠くを見つめたまま、ルシオは、決してプリシスを見ようとはしなかった。
「どうして…放っておかなかった」
微かに震えている声色は怒りからか、はたまた別の感情からか。
「どうして…って、私達仲間でしょ?放っておくわけ──」
「ふざけるな」
強い拒絶の込められた声に、プリシスは声を詰まらせた。
ルシオの顔がゆっくりと向けられ、初めて二人の視線が絡み合う。強い言葉とは裏腹、頼りなさげに揺れる彼の瞳に、プリシスは狼狽した。