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□第三章
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しれっと言ってのけたエルウッドの横で、ロベリアは小さく溜め息をつく。
「エルウッド…付き人だなんて前例がないわよ」
「…やっぱ、マズい、のか?プリシスのおじさんに怒られる、かな?」
しゅん、と一気に元気を失ったエルウッドに、ロベリアは笑いながら息子のつんつんとした頭を掻き混ぜるように撫でた。
「掟では禁止されていないわ。いいんじゃないの?」
「だよな、だよな!良かった!」
元気を取り戻したエルウッドに、ロベリアは再度笑う。
「気をつけんのよ。梨乃ちゃんを怪我させない事。あんた男の子なんだからね、女の子は守ってあげなさい。──そうだエルウッド、行く前にプリシスちゃんにご挨拶していったらどう?あの子、仕切りにあんたが旅立つ日の事気にかけていたみたいだから」
「プリシス!?」
ぱあっと、エルウッドの顔が華やぐ。
「OK、分かった!今すぐ行ってくる!ほら、梨乃!ぼさっとしてると、置いてくぞ!」
「ちょ…待ってよ、エルウッド!──それじゃロベリアさん、お世話になりました!有り難うございます!」
「いいえー。気をつけてねー」
お辞儀もそこそこに外へ飛び出していったエルウッドを追いかけ、あっという間に二人の姿は消えていった。
彼らの姿を見送っていたロベリアは振っていた手を下ろすと、ゆっくりと、胸の前で旅の安全を祈願する印をきった。
「どうか…あの子達を守ってね…」
◇◇◇
ツァイベル家より少し高台に位置する一際大きな家の前で、梨乃はようやくエルウッドに追い付いた。
息を整えている梨乃の前で、エルウッドは嬉々として敷地内に入っていく。
「おはよう、おばさん!」
ノックする事なく扉を開け放ち、エルウッドは屋内へと進入する。ソファに腰掛けていた女性は突然の来訪者に驚いた素振りも見せず、優しく微笑んだ。
「あらエルウッド君、おはよう。今日も元気そうね」
「おばさん!プリシスいる?」
「プリシス?ちょっと待ってね」
女性は階段を上がっていく。暫くして、栗色の髪をした少女が下りてきた。
肩も腹も露出している鮮やかな紅色の服に、腕には淡い桃色の、宛ら踊り子のそれに近いものを装着している。ほっそりとした足には橙色の短いパンツを履き、その上にダークグリーンの動きやすい様に工夫が施されたスカートが巻かれていた。