朝、あなたに出会って

□2、何かが揺れて
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チュプッ、チュプッ、チュプッ、チュプッ、チュプッ、チュプッ…

「……っ…」

チュプッ
…あぁ…気持ち…いっ…
…う…相手は痴漢だって

……チュプッ

…で…も…んん…優しいし…
…それに気持ちいい…チュプッ…よっ…はぁ…んっ

…だから…ちょっとだけ……もうちょっとだけ…足…開いて…みたい…

チュプッ……ふっ…チュプッ…チュプッ…チュプッ…


スルッ…
…太もも…なでられた…
…ほめ…ら…れた…?…
チュプッ…あぁ、んっ…う
…さっき…より…深い…
チュプッ…あぁ…わた…し…変……チュプッ

…うれしい…なんて……はぁ…でも…もっと…して…ほし…チュプッ…ぃい

……な…んか…甘い…香り…チュプッ……

…チュプッ…ぁう…も…う…びしょびしょだよ…チュプッ…うぅ…

…ち……直接……触って…ほし…い…
チュプッ…はやく…パンツに…指…入れて…
…チュプッ…
アソコが…熱い…ぅあ…チュプッ…
焦らさない…で…

チュプッ…
…う…私…何考えて…
チュプッ…でも…触ってほしくて…おかしく…なりそ…チュプッ…んん…




触られるたびに、胸の奥で何かが弾けるような感じがする。
もう、気持ち悪いなどとは欠片も思わない。
手から逃れるなんて考えられなかった。

規則正しく繰り返される愛撫に自分が壊れて行くのがわかる。

「吉祥寺ー、吉祥寺ー。」

降りなきゃいけない。
アナウンスに小さく顔を上げる。
わずかに目が覚めた気分だった。
バックを持ち上げようとした瞬間。
「…ぁ…」

ピチャ…

(!……やっと…触って…くれた…)

思わず動きを止める。

下着の内側に忍び込んだ指に意識が集中する。

(もうちょっと…もうちょっとだけ…あと、ひと駅だけ…)

触れた手がひだのふちにかかる。

「ドア、閉まりまーす。」

「…んっ」

わずかにもれた声はアナウンスにかき消された。
指の動きは、巧妙だった。

私の触ってほしい所からほんの少しずれた場所をたどる。

時に、人差し指で優しく。
時に爪先で。
「…っ」

何度目かに声をこらえた時、私は自分がゆらゆらと腰をふっていることに気がついた。

じらされて、じらされて、体が熱い。

トロリと何かが滴るのを感じながら、私の体はもういうことをきかないことを知る。

(…なんか…さっきから…いい…香り…)

ぼんやりとした意識の中で、思う。

ピチャ…

「……ん…」

(…何だろ…これ…)

「ー、ー。」
駅名のアナウンスがして、ドアの方で人が流れるのがわかる。

私はいつの間にかドアから遠く、人ごみの中に押し込められていた。

このあたりの人はみんな新宿まで行くらしく、さっきから誰も降りない。
ドアのそばの手すりと手すりのラインで見えない壁に区切られたかのように、私のまわりは、静かだ。

「まも…ア…閉ま…まー…」

駅員の声がはるか遠くに思える。

ピチャ…

誰も動かない、スーツの背中に隔てられたこの空間。
そこにただ、微かな水音と、甘い香りだけが満ちて行く。

ピチャッ…

(…この…香り…どこかで…)

指先がゆっくりと動く。
敏感になった私の体はそれに忠実に応えて、震える。

熱いものがもう一筋太ももを伝うのを感じながら、私はただ声を抑えるのに必死だった。

(…これは……これは…)
そろり、と指遣いが変化する。
斜めに立てた指の腹が入り口に触れる。

くっ、とかすかに力が入って。

…トプッ…

指が…入って来る。

(あぁっ…!)

目の前で光が瞬く。

足の付け根がじゅわり、と熱さを増す。

私に侵入してきたそれを歓迎するように、蜜が指に絡まって行くのがわかった。

ほんの少し、3センチばかりさしこまれた人差し指。

たったそれだけのことなのに、気持ちよくて崩れ落ちてしまいそう。

「…んんーっ!」

でも、私が床にへたりこむことも、はしたない歓声をあげることもなかった。


(…えっ…)

後ろから優しく腰を支える腕。

そして、口をふさぐなめらかな白い手。

私は唐突に思い出した。なぜわからなかったのか不思議なくらいだ。

(…この…香りは…)

後ろからきゅっと引き寄せられる。



「…お久しぶり」




立ち上るような木蓮の香りを感じるのと一緒に、とくん、と胸が鳴る。

「助けるのは、二回目ね…?」

首筋に甘い吐息。

もう触られていないのに、熱い蜜が滴っておちる音が確かに聞こえた。
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