朝、あなたに出会って

□2、何かが揺れて
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ホームに電車が滑り込む。
ため息をつくようにドアが開いて、人がわらわらとこぼれ落ちてくる。

みんな出ていってしまえば、今度はホームに細長く固まっていた人が、どやどや電車に流れこむ。
その間わずかに40秒。

私を乗せて、電車は何の滞りもなく、発車した。
乗ってすぐ、私は辺りを見渡した。

おじさんの頭の向こうにあの日と同じ、学ラン君と とがった顎の女が不機嫌そうに乗ってるのが見えた。

(木蓮さんは…いないか…)

がっかりしながら、伸ばしていた首を元に戻す。
ここの所、毎日同じ電車に乗っている。

そうして毎朝あの人を探している。

でも、あの日以来彼女を見た事はない。

(電車かえちゃったのかな…。)

向かいで爆睡しているおばさんの、強い香水の匂いに眉をひそめる。

ふと隣をみると、しわくちゃスーツのおじさんも、顔を背けているようだった。

連結部の方からは押し殺した小学生の笑い声が響いている。
時折、「しーっ!電車の中でしゃべっちゃだめっ!」とおませさんの声が聞こえてくる。

(先生に、言われたな…)
ちらりと見えた、2つ結びのおませさんの姿に自分が重なる。

口元に手を当てて、あくびをするふりをしながら、そっと笑った。

目の前のおばさんが、それに反応したようにうがっ、と変な声を上げた。
車内の視線が集まった所で、またひとつ。
うがっ。

その幸せそうな寝顔にまたクスと笑いかけた瞬間。

するり

と何かがお尻を撫でる。
明らかに意志をもった撫で方。

(…痴漢…か)

笑いたい気持ちは一気に吹き飛んで、顔をしかめる。

さわ、さわ

スカートの上で手が行き来する。

(あと、ふた駅か…)

どうにか我慢できる。

視線は窓の外へ。

手の感覚から意識を切り離して、ただ雲の流れを見つめる。

UVカットのガラスに私の顔がうっすらと映って消えた。

その奥で厚くうごめく雲から今日は光はのぞかない。

(…えっ…?)

スカートがめくられる感覚に、私の体はかたまった。

(ちょっと待ってよ…)

今まで、スカートの上から触られたことはあっても、中に入ってくることはなかった。

くっ、と手が触れる。

(っ…!)

布一枚向こうの感触に、思わず身がすくんだ。

あせりながら、ちらりと視線を横に走らせる。

おじさんの隣には携帯をいじる女子高生。

(なんで、私なのよ…ああいうスカート短い子狙えばいいじゃない…)

もう一度身をよじってみる。

しかし、振り切ることはできなくて。

さっきと同じように円を描いて手が動く。

(…やだ…)

後ろに立っているだろう、欲求不満のおじさんの顔が頭に浮かぶ。

脂ぎった額。
ぎらついた目。

(いやだいやだいやだ…)
吊革をぎゅっとつかむ。
もう一度、すがるように辺りを見渡す。

しわくちゃスーツのおじさんは、吊革に身を預けていつの間にかうとうとしている。

女子高生も携帯から目を離さない。

(誰か…助けてよ…)

ここからはもう、学ラン君ととがった顎の女も見つからなかった。

「だめよ、りっくん。しーっ!」

声のあとにすぐクスクス笑う声が上がって、泣きたくなった。

(…気持ち悪いよ…)

でも、我慢するしかない。

誰も助けてくれるわけはないし、私は臆病だから。
「ー、ー。」

駅名を告げるアナウンスが遠く聞こえる。

ただなでているだけだった手がそっと、割れ目に触れる。

(あと、ひと駅…)

ぎゅっと足を閉じる。
あと3分も耐えれば解放される。

嫌がっていることがわかったのか、すっと手が離れた。

(…よかった…)

しかしすぐに太ももに指が触れる。

直接触れたその指は、意外なことに、ひんやりと気持ち良い。


(…気持ち…いい?)

訝しむ暇もなく、人差し指が私の太ももをなであげる。

ピクンと身体が揺れるのがわかった。

何度も何度もなであげられて、そのたびに体が震える。

(な…にを…)

さっきまで撫でられていた、お尻がじんわりと熱かった。

不意にカリッ…と爪が下着のラインを弾く。


そして、再び指が割れ目に忍び込む。

くっ、とわずかに力を入れられて、私は目を見開いた。

(…え…)

ツプッと指先がのめり込む。

割れ目をなでては、食い込ませて。

優しい手付きでただそれを繰り返す。

(…なによ…これ…)

触られるたびに、私のそこがジン、と熱を持っていくのがわかった。

(パンツの…上からなのに…)

ツプッ、ツプッ、という感覚が次第に直接、頭に響くようになる。

指が何度目かに埋め込まれた時、ネトリ…とおかしな感触がした。

(…濡れて…る?)
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