短編集

□ 祭
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小さな木戸を開ければ
軽やかな ベルの音


カロロン、コロン…


これも、 すっかり聞き慣れた



雑多な商品の並ぶ店内はとても狭い



「いらっしゃい」



振り返れば 藍染ののれんを押さえる

白い指


袖口に僅かにのぞく浴衣は 小豆色



暗闇の中に 紅く唇が瞬いて



指先がたおやかに


私を呼ぶ




華奢なサンダルをその場に脱ぎ捨てて


私は灯のともされた店内から 暗いかまちへと


吸い込まれていった





―――【 祭 】
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