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『あぁ……──やはり貴女は逝ってしまうのか──…』

中世の服を纏い、舞台上を舞う。
いつもは跳ね揃っている黄金の髪は後ろで小さく纏められ、どこか気品を漂わせる。
しかし、どこかみすぼらしさを表現する服は自分の役所を上手く引き立たせていた。

『…分かっていた。許されぬ恋だと言うことは…──』

そう言って俯く、苦しさを表現するため腕を胸に当て、強く握りしめる。

少し声を掠れさせることも忘れずに。

『しかし、抑えることなど…──この気持ちを隠すことなどもう出来ない…っ──』

顔を上げ、立ち上がる。
目線は高く遠く、照明の辺りで。

クライマックスを意識して両手を広げた。

『──どうか…、許されるならば…──貴女へのこの想いと共に私は死にたい…っ!──』

自身の鼓膜を揺らす程、声を張り手を高く上げた。

しばらくの沈黙の後、いつの間に入っていたのか、人一倍大きく大袈裟な音で手を叩く音が聞こえた。

瞬時にそれが誰なのか理解する。だってそんな品のない拍手をする人は周りに一人しかいない。

一度深くため息を吐くと、バーナビーは腕を下ろした。

「まだこれ、練習なんですが。」

音の方に目を向けると、案の定緑色のシャツとハンチング帽を被った彼がにやにやと笑いながら此方を見ていた。

「いやいや、お見事お見事。
これもう本番やっていいんじゃねぇか?」

冗談にも聞こえる軽い口調で舞台下まで歩いてくる相手に、またため息が出る。

何を言ってるんだかこのおじさんは。

「適当なこと言わないで下さいよ。」

思ってもないでしょう、そんなこと。
そう付け足すと、少しだけ驚いた顔をして、彼はいやいや、と首を横に振った。

「本当だって。
それに、これもさ。あった方が嬉しいだろ?」

何がとは言わず、もう一度軽く手を叩きながら彼は笑った。

そう叩けばいいもんでもないだろうに。

「やめてくださいよ、嫌がらせですか。」

呆れたように横目でそう言うと、分かりやすく頬を膨らませる。

それに此方は何度目かのため息をついてそれに、と切り出した。

「まだ終わりじゃないんですけど。」

その言葉に、彼はえ゛っ、と驚いて目を丸くする。

そう、まだこの劇にはもう一つ台詞が残っているのだ。

全くせっかちだな、本番だったらどうするんだ。
と内心不満を漏らしながら、彼の方を向くと、聞きますか?と尋ねる。

そうすると、彼はとても嬉しそうに顔を輝かせたので、それに不覚にも胸を高鳴らせてしまう。
しかし直ぐ目を反らし、深呼吸をすることで役に入ると前を向く、視線は自然と彼に向いていた。

かちりと目が合ってしまうと、言葉は自然に、流れ出るように口から零れてしまった。


『───貴方を──…愛していました……───』











(本当は進行形なのだけれど)









──この後、予想外にも顔を真っ赤にさせた虎徹さんが、実は僕と同じ気持ちだったのだと気づくのはもう少し後のお話。──

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ちなみにバニさんがやっていた舞台は、使用人とどこぞの国の皇女様が身分違いの恋に落ちてしまうという悲恋の物語でした。チャンチャン





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